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横浜事変-the mixing black&white-
少しずつ浮き上がって来た裏の事情を赤島は推測する
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ard work』という赤色の文字が浮かんでおり、彼らのネットワークが乗っ取られた事を暗に示していた。
殺し屋統括情報局本部。横浜のどこかに存在する、殺人請負組織の中枢。その場所は局長以外誰も知らない。
そこは元々オフィスビルで、それを彼らが勝手に改造しているらしい。室内の中心に副局長の席と多くの電子機器が置かれ、その周りを四角形に本部の人間が囲っている。その空間に生活感は一切なく、情報を統括し、それを殺し屋達に振り分けるだけの装置のような淡々とした雰囲気を感じさせる。
しかしそんな仕事一筋の空間に邪魔者が入った。外部からのアクセスはもちろん、所在地すら知られていないこの場所のネットワークに何者かがクラッキングしてきたのだ。
「……私とした事が。これは組織結成以来の失態だ……」
阿久津の顔には先程から焦りと苛立ちばかりが立ち込めている。あまりに力を入れすぎたのか、すでに拳が僅かに血で滲んでいた。爪が手の平に食い込んだようだ。本人はその事実に気付いていない。堅牢な組織の中枢に侵入されたあげく、独自のネットワークや情報が全て誰かの手に渡ってしまった現実の方が重みがあるのだ。
――まさか奴が黒幕だったとは……。だが、ここまではまだ入り口に過ぎんだろう。
電子戦の途中、相手から回線が開かれた。こちらは10人以上でクラッキング阻止に向かっていただけに、敵の余裕さに寒気を感じたのを覚えている。敵は書かれた内容を読み上げるような声で言っていた。
――奴らの目的は殺し屋統括情報局の壊滅。最初は横浜の殺し屋達……裂綿隊の仕業かと思ったが、黒幕は違った。
――……私は、最初から踊らされていたというわけか。
ギリリ、と歯を軋ませながら阿久津はこれまでの事を思い出す。
最初に昨日のヘヴンヴォイス護衛作戦。チームAを軸にした特殊な任務だった。正面から敵に入られても、宮条麻生と八幡隆太の戦闘力を鑑みるに、10分は耐えられただろう。それだけの余裕があればフロントにいた暁ケンジらや外で待機していたチームCが援護に回れた筈だ。
――だが、ヘヴンヴォイスは裂綿隊とグルだった。
この情報は局長からも届かなかった。裏で揉み消されたのだろう。結果的に八幡隆太が死に、狩屋達彦が仲間を脱出させるために自ら犠牲になった。
――これが奴らの最初の狙い。チームAを壊滅させることだ。
阿久津はすでに黒幕の存在を知っている。しかし本部のネットは無論、個人的な携帯のデータまでいつの間にか汚染されていた。この室内にネットが使える要素は何も存在しない。そのため犯人を誰かに伝えられないのだ。
あまりのもどかしさに、彼はもう一度自身の腿を強く叩く。だがそれで事態が好転するほど、この世界は甘くない。
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