暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
少しずつ浮き上がって来た裏の事情を赤島は推測する
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、彼女とてプロの殺し屋だ。これまで何度も死にそうになった事はある。背中をナイフで抉られた程度で気を失ったりはしない。だが痛みは時間に比例してジワジワと全身に染み渡っていく。

 「宮条さん、どうかしましたか?」

 そこで突然声を掛けられ、彼女は肩を震わせてから前を見た。そこには顔にあどけなさを残した少年が心配そうな顔をしてこちらの様子を窺っていた。それだけなら親切な学生だなと思えるのだが、両手に持つ人を殺傷するための道具が全てを前言撤回させる。目の前にいるのは、一般人からしてみれば十分すぎる脅威であり、正真正銘裁かれねばならない人間だ。

 自分もその一人である事を自覚し、同時に痛覚で意識が途切れ途切れになっているのを感じて、宮条はケンジにこう言った。

 「ちょっと怪我しちゃったみたい。肩、貸してもらえる?」

 「え、大丈夫ですか?」

 「大した事ないから大丈夫」

 ケンジは拳銃を腰にマウントしてから丁寧な手つきで宮条に肩を貸す。そんな彼を見て、宮条は先程の戦闘を思い出す。
 最後の戦闘。鉄パイプで頭部にダメージを負うのを覚悟していたとき、自分を助けてくれたのはケンジだった。両手に持った拳銃を敵の背中に上手く的中させ、そのままあの世へと誘った。彼が使う銃の弾は他のメンバーの物より威力が低く、反動もそれなりに低い。しかし完全に遮断出来るわけではないので、普通の殺し屋なら片手撃ちという方法は行わないのだが――

 ――この子、やっぱり変わってるわ。

 生前の狩屋から訓練での話は聞いていた。彼が作った鬼畜メニューを二週間程休まずにクリアしたり、練習用拳銃を片手撃ちで的に当てたり――聞く話はどれも信じられないものばかりだったが、今では納得できる気がする。

昨日のホテル『ニューグランド』で、敵を引き付けていた自分を最終的に脱出まで導いてくれたのも、やはり彼だった。その際、彼は後ろから閃光弾を投げて敵を沈黙、そのうち一人を銃で殺している。普通の人間に、ましてや学生にそんな事が平気で出来るわけがない。

 ――狩屋が『稀代の殺し屋』って言ったのも分かるかもね……。

 そう心の内で呟きながら、宮条は徐々に目を薄めていく。身体にも力が入らない。怪我の所為なのだろうか。この程度で参ってしまう自分が情けなかった。

異変に気付いたケンジの声が響くが、それに反応する事なく、彼女は意識を暗闇に閉ざしていった。

*****

同時刻 横浜のどこか

 阿久津は力強く握った拳を自身の(もも)に向かって力任せに殴り付けた。周りには本部の人間がおり、一人ずつデスクが用意されている。その上には同じ型のパソコンが設置されているが、今は機能していない。その代わり画面には『Thank you for your h
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