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横浜事変-the mixing black&white-
田村要は自分の結論を汚れた世界に導き出した
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りなく進んでいるのを見て安心感を味わいたかっただけなのだ。

 要は心中に募る安堵を感じながら、軽い足取りでバンの中にいる敵の元へと走り出した。

 ――そういや『アイツ』が言ってた片手撃ちの奴って誰だ?昨日俺が見てない奴らか、もう死んだ奴か……。

 ――ま、そんな感じの奴がいたら殺そう。

 残酷な言葉を胸の内で唱え、要は敵陣へと駆け抜けていく。

 その『片手撃ちの殺し屋』が先ほど口に出して呟いた少年の事だとは考えもせずに。

*****

 宮条麻生は目の前で起き上がる敵達を見て、猛烈な疑問と焦りを頭に叩き出していた。

 ――何で、何で撃たれたのに死んでない……?

 大河内率いる狙撃班からの攻撃に、裂綿隊の何人かは確実に銃弾を背中に受けていた。それを自身の目で見届けたからこそ、後方で構えていた仲間に合図を出したのだが――

  ――わけが分からない。1キロも離れた地点からの精密な狙撃。それをマトモに食らった筈なのに。……血すら出ていない。

 まさかゾンビ、などという陳腐な事を考えてしまい、宮条は心中で自分を叱咤した。そんな異形はこの世に存在しない。

彼女は人間が作り出した裏世界での知識を掘り返していき、やがて一つの可能性に辿り着いた。

 ――防弾チョッキ。暴力団に雇われている連中の集まりなら試作品を譲渡して貰っている可能性も高いわ。

 ――けれど、これを付けているという事は……。

 そのまま憶測の域に旅立ちそうになる宮条だったが、事態はかなり深刻だ。すでに全員が復活し、銃を構えてこちらを睨んでいる敵達を視認し、彼女は思考を戦闘モードに切り替えて走り出す。

 その瞬間、敵の殺し屋達が銃を発砲する。しかし次の瞬間彼らは予想だにしない展開を見る事となる。

 宮条は前方から音速以上の速さで飛び込んでくる銃弾を高い跳躍で全て回避した。まるで猿のような身軽さで、優に3メートルは飛んでいただろう。

 その時点で異常性は目に分かる程なのだが、彼女は音も無く地に足を付け、俊足の速さで一番近いところにいた殺し屋の元へと駆けた。

 当の殺し屋は顔に疑問を浮かべ、銃を発砲した体勢のまま突っ立っていた。ようやく敵が自分を殺そうとしている事に気付いた時にはすでに遅く――宮条はいつの間にか右手に収めていた投擲用ナイフを殺し屋の首に突き付けていた。

 悲鳴を上げる間も無く、裂綿隊の殺し屋は血液を噴水のように首から噴出させて絶命する。そんな仲間の凄惨な最期を前にして、他の殺し屋達は改めて敵を警戒したのか、数歩後ろに下がった。

 「……やっと私を見たようね。女だからっていうのは、この世界では特に関係無いのよ」

 そう呟いた宮条は刃に付着した血を地面に飛び散らせながら、酷薄
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