黒のマガイモノ
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るけど、袁術が居る限り街はあっちの策で大火に沈まないし、区画警備隊も厳重に見回るから袁家大本の方も迂闊には手を出せない。まあ、華琳様の事だから連れて行った親衛隊を街の警備に当てる事も考えていらっしゃるでしょう。他にも……
一つの命令だけで華琳の狙いを全て読み取っていく桂花。表情は徐々に蕩けて行く。
劉表の死は既に情報として入っている。それに伴って、劉表軍が揚州に攻め込むであろう事も予測の内。
『暗殺されたのかもしれない、いや、されたのだろう』
虎と龍がどういった関係であったかを思い出せば、龍の臣下達は無実と示されても信じれない。この時代で完全に疑念を晴らすのは、少しばかり難しい。
龍は自分の命を使って戦を起こさせたのだ、と桂花は結論に至り、上手い策だと内心で褒めた。
――陳宮を帰らせたのは呂布と共に虎の留守を攻める為って分かってた。でも、これで劉表自体の名が傷つく事は無い。部下の暴走というカタチにすれば、敗北後の荊州は混沌とした派閥争いで泥沼になるから……劉備と孫策が横から掻っ攫っても問題ない。劉の名の方が有利に働くし、後々に私達と相対するには孫策が一歩退いて対応するしかなくなる。
同時に、早々と華琳がこの展開を読み切っていたのだという事に畏怖を覚え、身体が少しばかり震えた。
――そうなると夕と私に河北の掌握を任せて次は……ってダメよこれじゃ。まだ目の前の敵を倒してない。あの子を助け出してないじゃない。
そのまま乱世の先に思考が向きそうになるのを、桂花は無理やり押し留めた。
獲らぬ狸の皮算用。予想を立てるのは構わないが、今戦っている敵は他ならぬ華琳が認めた好敵手。浮ついた頭では、取って食われるだけ。
大きく深呼吸を二回。カロリーメイトを食べた後、机の上のお茶を手に取って口を潤す。
「ん……よし、先の事はまだいい。集中しなきゃだめよ、桂花」
誰に言うでも無い、自分で自分を鼓舞し、手に入れたいモノを再確認。
立ち上がり、しゃんと背筋を伸ばして天幕の入り口をバサッと乱暴に開いた。
――集ってきた騎馬隊の所に行かないと。まだこっちの準備は整い切ってないんだから。
騎馬を多く連れて行くという事は兵糧の関係が乏しくなる。
だから、桂花はこの時機まで待った。白馬と延津で数度の衝突が起こり、曹操軍が官渡に引くこの時まで。
でも……と内心でため息をついた。
――人心掌握に重きを置く夕なら、幽州の白馬義従を使う所までは“読んでいる”はず。だから、此処からが勝負どころよね。
敵対している親友の能力は桂花自身が良く知っていた。
戦略的思考の高さでは一歩劣る。負けたくないとは思っても、自己分析が出来ていなければ軍師など勤まらない。
ただ、彼女としてはこれでい
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