黒のマガイモノ
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なければならない。
だから雛里は……彼に台本を与えて道化師にする事を選んでいる。自分が嘘をつかせるだけだから、あなたは何も気にしなくていいんです、と。
思わず、自嘲の笑みが零れそうになる。自分の意思で自由に生きてと願っているのに、結局は縛り付けてしまう二律背反であると気付いた。
どうか憎んで、嫌って欲しい、と願う。
――もう、自分の命を投げ捨てるように生きて欲しくない。
やはり、誰かの為に壊れて行く彼にだけはならないで欲しいから。
「……ふむ、兵は将の色に染まると聞く。お主らよ、鳳雛様の話、どう思う?」
不意な問いかけに目を瞑り、二人の兵士は唇を噛みしめた。
ああ、治世で過ごす優しい彼ならば……きっとそうしたかったのだろうな、と考えて。
後に、ふっと優しく吐息を漏らした。
「白馬義従が戦えないなら俺達が戦うだけだわな。ふんじばって引き摺ってくればいいってわけだ。そうすりゃ白の大地は幸せになる」
「御大将が望むのは平穏な世。こんないい街を作る人を、あの方が殺すわけねぇんだ。俺達と向こうさんの幾人かは死ぬだろうが、御大将とこの街の皆、そんで哀しくない世の為になる喧嘩なら遣り甲斐があるぜ」
そこまで聞いてまたあんぐりと、長老は口を開け放った。いきなり口調が砕けたのにも呆気に取られていた。
自分達が彼の色に染まっていると言うなら、彼らはいつものように語ればいいだけである。
「け、喧嘩……?」
「おう、大老さま。喧嘩だ喧嘩。御大将と俺達が白馬の王と戦うなら、その場所はただの喧嘩に過ぎねぇ。殺す奴等には申し訳ねぇが、俺らにも譲れねぇもんがあるからな」
「言葉で分かり合えないから殴り合う。立場とかしがらみってのがあるから殺し合う。俺達も付き合って殺し合わなきゃなんねぇが……喧嘩ってのは意地張ってなんぼだ。黒と白に譲れねぇ意地があるなら、俺達の命賭けてくれて構わねぇ。まあ、白の部隊を一人でも多く生かして、あんたらの王を取り戻してやんよ」
ははっ、と楽しげに語らう兵士達。
何が哀しくて友と殺し合いをしなくてはならないのか、とは彼らは言わない。理不尽だ、下らない争いだ、とも叫ばない。押し通したいモノがあるから、自分達は戦っているのだと言わんばかり。
彼ら自身でさえ、数多の敵と戦友たちに理不尽を齎してきたのだから当然でもある……が、秋斗のように細部までは想いを向けない為に、彼らは壊れず、今尚バカ者の集団として雛里と戦っているのだ。
「くくっ……徐晃様の兵は変じゃの。いや、あの方も子供のようじゃったからのう……彼の部隊に相応しいのやもしれんな」
呆れたように苦笑を零した長老は、何処か親しみの眼差しを向けていた。
「ただな、大老さまよ。俺らにも今すぐ殺したいくらい憎い相手
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