第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十六日・夜:『屍毒の棘』
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天鵞絨のような抜群の手触りであったが。
それは、よく妹にやっていた事。無意識に近い行為だ。だからこそ、本心からとも言えなくもない行為であり。
「────『空白』」
そんな暖かさからの、彼が持ちうる最大級の訣別の言葉で相違なかった。
………………
…………
……
以前に飾利にそうしたように、記憶を消した涙子を寮に送り届けて。以前に飾利にしたように、後始末を施した後で。
またこんな事がないように、非礼を詫びつつ。彼女の私物らしい、暗示に掛けられた状態でまで持ち歩いていた『御守り』に『監視』と『解呪』のルーンを刻んだステイルのカードを仕込んでおいた。
「まぁ……結局、オチはこんなもんだよな。俺みたいな、ド三品は」
『てけり・り。てけり・り』
「煩せぇよ、さっさと偃月刀出せるくらいには回復しろっての」
先程までの時間を無に還した嚆矢は苦笑しながら煙草を銜え、火を灯す。そう、特別とは今のところ、『ティンダロスの猟犬』の恐怖に堪えた白井黒子のみだ。灼け付く香気を肺腑に吸い込み、味わいながら気道を逆流させ、夜空に呼気する。そんな単純な行為を五分ほど楽しめば、もう煙草はフィルターだけだ。残念だが、頃合いだろう。
取り出した『輝く捻れ双角錐』内蔵の懐中時計、現在時刻は二十一時ジャスト。吸い殻をショゴスにくれてやり、嚆矢は一時間ほど前から震え続けていた携帯を取った。
『ハーイ、ボクウォッキー、アハハッ!』
『結局、某テーマパークのマスコットキャラの物真似してんじゃないって訳よ!』
早速、フレンダに突っ込まれて。性悪猫の、悪辣なマスクを被って。直ぐに、合流する事を約束する。
第一、はぐれたのは彼女らのせいだが。変態紳士は、そんな些末な事は気にはしない。
早々と合流予定を立てて、嚆矢は目指す。彼が、バイクを停めている地点を。駅前から、足跡を残さぬように走り抜けてきた『足』を目指して。
………………
…………
……
携帯を切り、苛立ち紛れに蹴り飛ばした空き缶がカラコロと音を立てて転がる。それを為した黒タイツの脚線美、即ちフレンダは、隣に立つ最愛に向き直る。
「で、結局まだ監視な訳? いい加減、潜入なりなんなりしてサクッと終わらせないと、私らが麦野にサクッと『原子崩し』されるって訳よ」
「だからこそ、超万全を期すんですよ。ジャーヴィスの能力はこう言う作業には超向いてるみたいですから」
ある医院から少し離れた道端、死角となっている袋小路。そこに、フレンダと最愛は陣取っていた
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