第二章 彼と彼女の事情
第十八話 〜彼の選択〜
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上に半殺しにされるのよりも、ワシは今恐ろしく感じているやもしれぬ。
顔を長い白銀の髪で隠して、こちらに見せない妃宮が、何を考えているのかさえ読みとることが出来ぬ。
傍目から見れば、ただ顔に髪がかかっているだけで、普段と変わらぬ姿で立っているだけに見えることじゃろう。
「……仮面を被り続けることはいけないことですか?」
不意に、ソプラノの声で弱々しくそんな言葉がワシに投げかけられた。
「自分も、他人も誰も彼もが傷つかないように、自分の醜く人に知られたくないような正体を隠すことが出来て、それでなおかつそれを続けることが出来るのであれば、私は構わないことだと思います。」
その言葉は果たしてワシの問いかけに対するものであったのだろうか。
「秀吉君、ほら御輿がきましたよ?」
あっと言う間に体勢を立て直す彼女を前に、ワシは敗北を悟るのじゃった。
「「ワッショイ、ワッショイ」」
「二人とも見ないでえぇ!!」
向こうから掛け声が飛び交うなか、御輿に乗せられた明久がこっちに向かってくる。
「何じゃ、その無理矢理犯されたようなことを宣いよって……」
「何といいますか、吉井君って良い性格をなさっていらっしゃいますよね。」
二人揃って場違いな言葉が零れ出たのを、顔を見合わせながら苦笑いしていると、御輿の警備隊まで含めて全員がワシらの前に勢ぞろいしていた。
「司令と木下に敬礼!」
おそらく処刑部隊の隊長を務めている覆面が前に進み出て、号令をかける。
奴の宣言の下、一斉にワシ等に敬礼が向けられる。
平然とそれに答礼する妃宮のその素顔が如何なるものなのか。
(お主のことが分からぬ。ワシらとは違うのじゃろうか。)
勇んで踏み込んでもこうなるのであるなら、妃宮がワシらに自分から心を開くまでは何をしても無駄なのじゃろう。
そう、ワシは答礼をしながら思っていたのじゃった。
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