第二章 彼と彼女の事情
第十八話 〜彼の選択〜
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表と秀吉君、そして僕の三人だけで、作戦会議もなにもあったものじゃない。
吉井のこと以外は議題に上がらなかったのは、余りにも吉井の点数がショックだったことも有るだろうけれども、それ以前に突っ込む気もなかったのだろうけれども。
「さて、私たちはどういたしましょうか?」
教室に残った二人に僕が問いかけると、秀吉君は苦笑を浮かべながらこっちにきた。
「そうじゃの、明久の処刑の見物でもいくかの?」
「それも良いですね……代表殿は如何なさいますか?」
「そうだな、どうせやることもないんだし俺も……いや、すまない。翔子との対戦までに少しでも知識の確認をしておく。おまえ等は自由にしてくれ。」
そう言って小学生向けの日本史の解説書をぺらぺらとめくり始めた代表殿を邪魔をするわけにもいかず、僕と秀吉君は二人連れだって三角木馬巡業のチェックポイントの一つであるという新校舎二階のAクラス前に向かったのだった。
____________
一年のAクラスの教室には一年の姿が見えなかった。
確かこの時間は化学の実験であったはずじゃから、今の人はいなかった。
妃宮と二人で動くことになると聞いてここの場所に行こうと申したのはそれなりに意図したのじゃが。
「妃宮よ、実はお主には聞きたいことがのじゃ。」
「何でしょうか?」
そう言って、優雅に微笑みを浮かべる目の前の完璧人間に、ワシは前振りも入れずに一番大きな疑念をぶつけた。
「お主は何故そのように素のお主を出すことを拒むのじゃ?」
「……言っている意味が分かりかねますね。どういうことでしょうか。」
自然体に返してくる妃宮、この反応まではワシの想像通りじゃ。
じゃが、これにはどう返してくるのじゃろうか。
「お主、最近やたらと周りを警戒しておるじゃろ、それこそ初めてFクラスに足を踏み入れたとき程にの。お主、バレておらぬつもりじゃったろう。たしかに姫路も雄二も気づいておらんじゃろうがな。」
「秀吉君。」
そのとき、いつものソプラノの声がアルトにまで急激にトーンが落ちた。
そして妃宮自身が纏う空気も底冷えした感じの、抜き身の刃のごとくといったこれ以上素手で拒絶感が露わにされた。
ワシに自分の心の内に勝手に土足で踏み込んでくるなと、そう言外に告げてくる。
その表情には、明らかに作り物めいた微笑みが浮かび上がっているのがさらに恐ろしい。
いったい何がすべてに優れておるこやつをこの様にしてしまったのじゃろうか。
ワシは自分が開けてはならぬパンドラの箱を開けてしまった気がしてならぬ。
「…済まぬ」
ワシが喉から絞り出すことができた言葉はたった三語でしかなかった。
妃宮に言ってやろうと思っていたことの殆どが抜け去り、ワシはただ彼女からの審判が下るのを待つ他なかった。
いやな沈黙がワシらの間を流れる、姉
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