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この世で一つだけのメリー=クリスマス
第六章
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第六章

「まあこういうのは勝負事じゃないけれど」
「何か勘違いしているような」
「それは気のせいよ。そう思って」
 未来はそう言い繕う。
「わかったわね。じゃあ一、二の三で」
「出すんだね」
「そうよ。じゃあ」
 未来が言う。彼女も光男ももう側に置いていた鞄からそれぞれの贈り物を出している。そうしてそれを自分の背中に持って隠しているのであった。合図と共に出すつもりなのは言うまでもない。
「一、二の」
 未来が音頭を取る。そうして。
「三っ、はい」
「これ」
 二人は同時にそれぞれの贈り物を出してきた。それは。
 未来はセーターであった。青い毛糸のセーターであった。
 それに対する光男のものはというと。これには未来も驚いた。
「何、それ」
「頑張って描いたんだ」
 にこりとした笑みで未来に答えた。
「時間があったからね」
「そうだったの。けれど」
 まだ驚きを隠せない。その顔でまた言うのだった。
「それ、私よね」
「そうだよ」
 未来の言葉にまた答えるのだった。やはりにこりとした笑みは変わらない。
「どうかな。衣装も」
「そうね。気に入ったわ」
 自分のイラストを見ながら答える。そこに描かれているのはミニスカートのサンタの衣装を着た彼女自身であったのだ。右手には袋を持って笑っていた。
「こんな私だなんて」
「どうしようかと思ったんだ」
 そうも彼女に告げる。
「何か買おうかなって思ったけれど。それも何かな、とか思って」
「それで描いたの」
「うん」
 そう彼女に述べるのだった。
「色々考えたけれどね。この季節だし」
「いいじゃない」
 未来は満面の笑顔であった。その笑顔こそが何よりの証であった。
「有り難く頂くわ」
「有り難う」
「それで私もね」
 未来は何かかなり負けた気になっていたがそれでも自分のセーターを差し出す。その青いセーターを。
「これだけれど」
「何か温かそうだね」
「冬で寒い色だけれどね」
 未来はそれが少し申し訳なさそうだったがそれでもこのセーターを気に入っている感じであった。それはどうしてかというとはっきりとした理由があった。
「青好きだったよね」
「うん」
 光男は笑顔で答える。
「大好きだよ」
「そう言ってくれると思ったから」
 それが理由であった。
「よかったわ」
「この青いセーター着てもいいんだよね」
「勿論よ」
 その為に編んだのだからこれは当然であった。しかしそれを実際に言葉に出してくれること程嬉しいこともないのであった。
「是非着てね」
「うん。僕のポスターは」
「この世で一つしかないのよね」
「そうだよ、未来ちゃんが編んでくれたセーターと同じ」
 光男も笑顔になっていた。その笑顔で述べるのだった。

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