暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜赤き皇が征く〜
str1『監獄の始まり』
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、リアルワールドでは《神童》と呼ばれた天才だ。だが、それであるがゆえに、いつの間にか『人の心が理解できない』人間へと育ってしまっていた。それは他人のそれでもあるし、もちろん自分の感情すらも察せない。

 だが、初めて仮想世界に触れた時。

 クロスは、見失っていた自分の感情が、取り戻されていくのを感じた。

 ――――この世界に触れ続けていれば、いつか十全な感情を取り戻せるのでは。

 ――――他人の心に触れれば、何か分かるのではないだろうか。

 ナーヴギアで作られた仮想世界は、感情表現が少々オーバーである、というのも手伝って、仮想世界とクロスは相性がよかった。

 クロスは、なにか命題に直面した時に、優先的に他人の心情を理解しようとする習性がある。だが、彼は良くも悪くも『天才』だ。さらに、彼は感情を察せないがゆえに『物わかりが悪い』。さらにたちの悪いことに、『探究者』である。とことん突き詰めて、その理由を知りたがる。

 故に、先ほどから、ナーヴギアを取り外した遺族たちの心情を察そうとしているのだが――――

「……だめだ。全く分からない」

 やはり、理解はできなかった。

 どうやら、まだ何か足りないようだ。

 ならばどうすればいい? ――――方法は、既にでている。この世界で、生きていけばいい。自分の感情を取り戻して、主観的に物事を見つめられるようになれば、なにか分かるかもしれない。

 ならば、次なる命題は『この世界で生き抜くために、自分はどうすればいい?』である。これの答えも、至極簡単に出てくる。

 ――――力が、必要だ。

 これより先、SAOではほかにも『生きるためには力が必要』と考えたプレイヤー達が、それを欲してあがくようになるだろう。SAOはMMOゲームだ。経験値をためてレベルを上げ、様々な知識を獲得し、強い武器をそろえることが、強くなるための近道。そして、溢れ出たその『強くなりたいもの』たちは、遠からずリソースの奪い合いを始めるだろう。

 ならば、それに巻き込まれないためにはどうするのか? 簡単だ。もっと遠くに行けばいい。

 幸いなことに、その方法と、いくべき場所は、すでにクロスの中で確立されている。クロスは、βテスターだったからだ。

 βテスターは、新規プレイヤーよりもこの世界に関する知識が多い。強さの一つである『知識』は、既に持ち合わせているのだ。

 もちろん、β時代の限界分までしかそのアドバンテージは生きないし、正規版で変更された点には知識が追いつかない。

 だが、そこまでならどうにかなるだろう。幸い、クロスは近場で自分と相性のよさそうなクエストなどはすべて暗記していた。

 クロスのβ時代の武器は《両手用直剣》だ。本来は日本刀のような武
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