第6話 回転木馬ノ永イ夢想(後編)
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さん」
二人の上では、空が桃色に染まっている。
「警備員さん、警備員さん」
「どうしました?」
「鳥が飛んでいたの」
「鳥?」
「茶色くて、大きな鳥」
その姿が一層薄くなり、色が消え、クグチは太陽に抗い目を凝らした。
「のんびり飛んでいたの」
もう、ほとんど見ることができない。
「図鑑で見たのよ。優しい顔の鳥だった」
「何ていう鳥なんですか?」
返事がない。
消えたのか。いいや。まだいる。うっすらと存在する。
「わからない……」
耳の中で、悲しげに、
「思い出せない」
顔を苦しそうに歪めた。
「ああ……何も……思い出せない……」
太陽光が角度を変え、あさがおを焼きつくした。
目を凝らしても、耳を澄ませても、眼鏡も、イヤホンも、二度と彼女を見つけ出せなかった。
ぬかるみに跪いて、クグチは合掌した。
電磁体が人ではないことなどわかっている。
それでも、冥福を祈った。
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