消えゆく者・託されし想い
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サラ姫に、何て云えばいいんだろう。
イングズが、光の戦士すら消し去る呪いの矢からおれを庇って、消えてしまいました……?
それとも、はっきり云った方がいいんだろうか。
死んだって。
もう元には戻らない。
二度と、逢えないんだって。
白魔法も、回復アイテムも効かなくて、イングズは全身漆黒の塊になって崩れ去る前に、おれに"サラ姫を頼む"と云い残した。
そう云われたって、どうしたら─────
イングズの代わりになんか、なれる訳ないのに。
今手元には、唯一残った遺品で雫型のエメラルドのペンダントがある。いつも、身に付けていた────
胸元に下げたそれを見つめる目は、とても優しかったんだ。
サラ姫から賜った物─────そう聞いた事がある。
………手元でそれを見続けても、虚ろな自分が映るだけで他には何も見えてこない。
イングズには、サラ姫が見えてたんだろうな。
「 ………ルーネスさん?」
ドアの向こうから、不意に声がした。
サロニア解放後、暫く宿屋の一室におれが籠ってるのを心配して来たんだろう。
アルクゥとレフィアは、図書館に行ってるんだっけ。
────イングズの存在が消えてしまって以来、水の巫女エリアはおれ達と行動を共にしてくれていて、彼女の白魔法には助けられている。
控え目に部屋に入って来た彼女はお盆を持っていて、その上にはマグカップが二つ乗っている。
「温かいミルクを持って来ました、一緒に飲みませんか?」
「あ………うん、ありがとう」
ベッドの隅に一緒に並んで腰掛け、マグカップに入った温かいミルクを喉に通すと、思わずほっと溜め息が出た。
「次の目的地はダルグ大陸ですが、どうしますか……?」
少しして、エリアが静かに聞いてくる。
………おれは顔を合わす事が出来ずに、カップに目を落としたままでいる。
彼女が云おうとしている事は分かってる。
ノーチラスを譲り受けて、ほんとはすぐにでも出発できるんだ。
次の目的地に─────
いや、違う。今ほんとに行くべきなのは………
「サスーン城に、行かなきゃな。サラ姫に、話しておかないと」
大切に想っている存在が、もう戻っては来ないって。
………出かかった言葉は、口の中で虚しく消えてゆく。
エリアは、それ以上聞いてこない。気を遣ってくれてるんだろう。
このままじゃいけないのは、おれも分かってる。
分かってる、けど─────
「やっぱり、恐いんだ。サラ姫の反応が、責められるのが。────泣かせてしまうのが。
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