第四十六話 真意
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公は首を横に振った。
「リッテンハイム侯、皆も聞いて欲しい」
「……」
「このままでは帝国は崩壊する」
思いがけない言葉だ。皆が息を呑んだ。
「……それは改革をしてもですか?」
「改革をしてもだ、フレーゲル内務尚書。少し前にエーリッヒからそれを指摘された。わしは否定出来なかった。気になって調べた。確かにこのままでは帝国は崩壊するだろう。状況はわしが思っていたよりはるかに悪い。まさかこんな危機が潜んでいるとは思わなかった、認識が甘かった……」
皆が固まった。大公は酷く疲れた様な表情をしている。崩壊の理由は分からない、しかし事態は深刻だという事だ。
「如何いう事です、ブラウンシュバイク大公。改革を進めているのに何故帝国が崩壊すると?」
「人口の減少だ、軍務尚書。このままではいずれ帝国は国を保てなくなる」
思いがけない事を聞いた、人口の減少?
「かつてこの銀河には三千億を超える人間が存在した。しかし今では帝国、反乱軍、フェザーンを合わせても四百億に満たぬ人間しか居らぬ。長期に亘る戦争と混乱により人類は約十分の一にまで減少した」
十分の一、その言葉が耳に響いた。そんなにも減ったのか。
「更に拙いのは成人男子が酷く減少している事だ。男が少な過ぎる、男女の均衡がとれぬのだ」
悲鳴のような口調だった。
「結婚出来ぬ女、子供の産めぬ女、家庭を持つ事の出来ぬ女が増えている。我ら貴族は街に出ぬ故分からなかったが帝国領内では男子が圧倒的に少ないのだ。これは大きな社会問題になりつつある」
大公の声は苦渋に満ちていた。
「このまま戦争が続けば戦死する成人男子と子供の産めぬ女が増えるだけだ。つまり新たに生まれてくる人間は減り続け人口の減少には歯止めが効かぬ状況が続く。エーリッヒが捕虜交換を言い出したのもそれを考えての事だろう。二百万人の成人男子が戻ってくる。しかし気休めにしかなるまい、おそらく五十年後には人口の減少は深刻な社会問題になっている。百年後には帝国を崩壊させかねぬ事態にまで深刻化しているだろう。百五十年後には……」
大公が首を横に振った。確実に帝国は崩壊するという事か……。暗澹としているとブラウンシュバイク公が“その後は私が話しましょう”と言った。
「帝国が崩壊すれば人類は惑星単位で生活水準を維持する事になります。つまり場所によっては中世に近いような生活を強いられるという事です。簡単な病気で人が死ぬでしょう、伝染病が起きれば無人惑星になるかもしれない。特に辺境星域は酷い事になる筈です。帝国では人類は比較的発展していた帝国中心部に細々と生存する事になると思います」
思わず溜息が出た。私だけではない、他にも溜息を吐いている人間が居る。表情は皆一様に暗かった。
「これを食い止めるには戦争を終わらせるしかありませ
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