第四十六話 真意
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念ですが本当の混乱は来年からです。場合によっては軍を動かす事にもなるでしょう」
応接室から音が消えた。皆が押し黙ってブラウンシュバイク公を見ている。
「如何いう事だ、何が有る」
大公が押し殺した声で義理の息子に問い掛けた。公がまた息を吐いた。
「貴族達が大人しく収益の四十パーセントを手放すと思いますか? 黒真珠の間で連中の顔を見ましたが皆、不満そうでした。念のためアンスバッハ准将にそれとなく探らせましたが政府を欺く、今以上に収益を上げる、等と話していたそうです」
大公が“なんと”と呻き声を上げリッテンハイム侯が“馬鹿な”と言って大きな音を立てて腿を叩いた。苛立っている。
「収益など簡単に上げられるわけが有りません。おそらくは無理をして失敗し膨大な損失を出すでしょう。当然ですが政府への十パーセントの支払い、領地開発への資金も出せなくなる。つまり領地経営に失敗したという事になります」
彼方此方で呻き声が聞こえた。ルンプ司法尚書が“馬鹿共が! 折角の温情を無駄にする気か!”と吐き捨てた。
「領地経営を失敗か……、取り上げだな」
「はい」
「抵抗すれば反乱として取り潰すか」
「はい」
大公と公の会話は淡々としていた。それだけに重く響いた。
「……どの程度の貴族が生き残るとお前は見ているのだ」
「帝国貴族四千家の内、領主として生き残るのは半分もいないと思います。それ以上は……、何とも言えません」
ブラウンシュバイク大公が大きく息を吐いた。
「お前は予めそれを想定していたのか?」
「……あの法は領主としての能力、自覚、責任を持っている貴族を対象にしているのです。当然ですがそれらが無い貴族はあの法の主旨が理解出来ない。排除される事になるでしょう」
公の答えは肯定だった。皆の視線がブラウンシュバイク公に向かった。だが公は怯むことなく平然とそれを受け止めた。
「誤解しないでください。貴族が嫌いだからあの法を作成したわけではありません。宇宙から戦争を無くすためです、そのためにはあの法が必要でした」
今何と言った? 戦争を無くす? 聞き間違いか? 慌てて皆の顔を見回した。皆驚いている、聞き間違いではない。公は確かに戦争を無くすと言った。ブラウンシュバイク大公は呆然と義理の息子を見詰めていた。
「そうか、この宇宙から戦争を無くすか、そのためにはあの者共が邪魔か。だから排除するというのか……」
「……」
「そうか、捕虜交換も平民達を慰撫するだけではないという事か。気付かなかった、何と愚かな事か……」
ブラウンシュバイク大公が目を閉じて大きく息を吐いた。
「分かった、わしは止めぬ、いや止められぬ。エーリッヒ、お前の好きに遣るが良い」
ブラウンシュバイク大公の言葉にリッテンハイム侯が“大公!”と叫んだ。だが大
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