第四十六話 真意
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厚いの。しかし平民達を宥めるためにはそのくらいは必要か」
リヒテンラーデ侯の言葉は皮肉ではないだろう、確かに手厚い。皆も同意するかのように頷いている。
「これらの政府発表をリヒテンラーデ侯にお願いしたいのです」
「私にか、広報官ではいかぬのか」
リヒテンラーデ侯が驚いている。それを見てブラウンシュバイク公が“侯でなければ駄目なのです”ときっぱりと答えた。皆がまた顔を見合わせた、未だ何かが有る。公は何を考えているのか……。
「平民達は不安に思っています、政府が何処まで改革に本気なのかと。その理由の一つが政府首班であるリヒテンラーデ侯の声が聞こえてこないという事なのです」
皆が息を飲みリヒテンラーデ侯が不愉快そうに顔を顰め“どういう事だ?”と問い掛けた。
「侯はこれまで宮内尚書、内務尚書、財務尚書を歴任して国務尚書になられました。しかし改革をしてきたわけでは有りません。改革を実施出来る状態ではありませんでしたから已むを得ぬ事でした。我々にはその辺りの事は分かります、しかし平民達にはそれは分かりません」
「なるほど、だから平民達の支持が政府では無くブラウンシュバイク公に向かうと言うのだな」
リッテンハイム侯の言葉に“そうです”と公が頷いた。
「此処でリヒテンラーデ侯に平民達に話しかけて貰えば平民達も侯が自分達の事を考えてくれていると安心するでしょう。侯だけでは有りません、他の政府閣僚も積極的に平民達に話しかけるべきです。その事が平民達から政府への信頼に繋がります。その分だけ改革はやり易くなる」
公が口を噤むと皆が顔を見合わせた。リヒテンラーデ侯が大きく息を吐いた。
「やれやれだの。大勢に話しかけるのは苦手だがやらざるを得んか」
リヒテンラーデ侯がぼやいた。その有様に皆が失笑した。侯が“笑うとは酷い奴らじゃ、他人事ではないのだぞ”とまたぼやいた。確かに私にも降りかかってくる。しかし、いかん、失笑が止まらない。
「宜しくお願いします」
ブラウンシュバイク公が生真面目な表情でリヒテンラーデ侯に頭を下げた。
少しの間応接室を静寂が支配した。皆がそれぞれの表情で沈黙している。安堵している者、沈思している者、眠たそうな表情をしている者……。
「取り敢えず一段落、そう見て良いのかな」
ブラウンシュバイク大公が皆を見渡した。誰も答えない。一段落、そう思いたいが不安は有る。貴族達を信じられない、平民達を信じられない、そんなところだ。皆が口を噤むのも同じ思いからではないだろうか。
「これで何とか来年からの決算報告書と資産目録は無事に乗り越えられると思うのだが……」
ブラウンシュバイク公が何かを言いかけ口を噤んだ。
「如何した、何か有るのか、エーリッヒ」
大公の問い掛けに公が沈痛な表情で息を吐いた。
「義父上、残
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