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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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ゃねえよ羊さんの真似してる暇があるならとっとと言え」
相野の絶叫に冷笑を飛ばし、ナイフを更に深くに埋めていく。
脳に切っ先が届くまで、あと一センチもないだろう。
血が耳の孔から吹き出し、ナイフを握る蔵馬の右手を、激痛と耳の中にナイフを刺された恐怖で醜歪した相野の顔が赤く塗れる。
蔵馬がナイフを耳から抜くと、血とリンパ液が抉られた肉が混ざった、煮崩れたトマト汁の様な液体が溢れ出して糸を引く。
相野は平衡感覚の狂いと激痛から胃液をぶちまけた。
「これでよく聞こえる様になった。さあ、電話の相手は誰だ?」
ショックで項垂れた相野は、悲鳴の残滓を呟くだけで質問に答えない。
「なんだ、聞こえなかったのか? もしかして、もう片方の耳も掃除してほしいのか。甘えん坊め」
子供を相手にするような口振りで蔵馬は高らかに笑い、そして右耳にナイフの切っ先を宛がう。
さすがに今の苦痛の再来には、相野の精神が拒絶反応を抱いたらしい。
心神喪失していた相野は弾けるように頭を起こし、涙と鼻水を垂れ流した醜い顔を蔵馬に向ける。
「ああああ! や、やめやめてやめてください! 聞こえます! 言います! 言いますからもうやめて……!」
「言う気になったなら早く言え。俺は耳掻きをしたくてウズウズしてるんだ」
「はい、はい……言います……」
過呼吸気味になって口を開閉する相野は、絞り出すように、一言。
「……御堂……」
「御堂? それが電話してきた奴の名前だな。じゃあ武器の調達係もそいつか?」
「そ、そうです……御堂が全部……全部あいつ……あいつが持って来たんだ……!
武器も、計画も! あいつだ! あいつが全部悪いんだ! あいつが! あいつがああああああああ!」
堰を切ったように言葉を吐き出す相野から蔵馬は一歩離れ、マジックミラーの方を見る。
恐らく向こう側では、諜報部員たちが御堂の名前を調べに走って行っただろう。
「なら、人質を殺して一人逃げたのも、その御堂か?」
「そう……そうです……人質もあいつが勝手に殺したんだ……あいつ、一人
で逃げたのか……御堂、御堂おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
怒りに吠える相野は、嘘を吐いているようにも、誰かを庇っているようにも見えない。
どうやら、彼も御堂と言う男に利用されていただけらしい。
……が、そんなことはどうでもいい。この男が国家に牙を剥いたことに変わりはない。
聞きたいことは聞いた。後は他の職員に任せることにして、蔵馬は尋問室を出る。
「……御堂」
憤怒の叫びの中、今聞いたその名を舌で転がせた。
藍色の夜を東に浮かべ、橙の夕日は西の山の陰に隠れようとし
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