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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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。陸上自衛隊で使われている冬季装備の防寒外衣だ。屈強な自衛隊員が着用する事を前提に作られた衣服。子供の体躯である義体の彼女らが着ると、まるで太った照る照る坊主だ。
「お待たせしましたー。はい、アザミちゃんの分です」
言って、同じものをアザミに手渡すのは坂崎咲だった。
一昨日の全身黒の戦闘服とは違い、グレーのパンツスーツ。上から着た黒いコートの襟に、明るい茶髪がかかっている。
「さすがに秋服じゃ寒いでしょう? 作戦部で使う物を借りてきました。サイズは合わないと思うけど、無いよりはマシだと思って」
「ありがとうサキちゃん」
「どういたしまして。風邪ひいちゃいけませんからねー」
受け取って袖を通す。さすがは氷点下を下回る北海道でも使える冬季装備。これなら肌を刺す冷気を通さない。
被服の偉大さに軽く感動を覚えているアザミに、坂崎は穏やかな微笑みを見せる。
彼女の役職を知らない人間が見れば、小学校の優しい担任教諭か何かだと勘違いするだろう。テロリストの殲滅や要人暗殺の現場指揮を執る女だとは誰も思うまい。
「早く始めようよぉー寒いよぉー」
モコモコと動くタンポポに急かされ、坂崎はポケットからライターとちり紙を出して、アザミが作った枯葉の山に火を点けた。
小さな火は白煙を揚げながら、徐々に大きな炎となって明かりと熱を放ち始める。
その火の中に、アザミは用意しておいた十個のアルミホイルに包まれた芋を入れた。
彼女らが始めたのは、焼き芋だった。
ただし使っている芋はサツマイモでは無くジャガイモだ。
「サキさん、今日は引率してくれてありがとうございます」
頭を垂れるモモに、坂崎はにこにこと笑みを深くして、足元に落ちていた枯れ枝を拾い火をかき混ぜる。
「いいんですよー、私も暇でしたし。たまにはみんなと遊びたいですもんね。
ところで、どうしてジャガイモなんですか? ドイツ風?」
「これはアザミが育ててたジャガイモなんです」
「そうなんですか?」
火の間近で熱に当たる迷彩服三人組の一人となっていたアザミは、首だけで坂崎に振り返り、頷きを返す。
「うん。夏頃に食堂で使い忘れて芽が出てきたジャガイモを貰って。
トキワさんが地面に埋めたらジャガイモが出来るって言うから、やってみたら本当に採れたの。勝手に植えてめちゃ怒られたけど」
「ああ、食堂の花壇にいつの間にか、植えたはずのない未知の蔓植物が大繁
殖していたのって、これだったんですね……」
「どうせなら食べようって事になったんですけど、そしたらタンポポが焼き芋したいって駄々をこね始めて。
結局みんなでセンター内の落ち葉や燃えるごみを集めたら、それを使って焼き芋をしてもいいと許可が下りたんです」
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