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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
05話 蒼き将
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を用いれば君に最高の治療を与えることが出来る。
 口惜しいけどね、如何に当主とはいえ家の資産は好き勝手には出来ない。だが――身内、しかも優秀な人材に対してで有れば話は違う。」

 斑鳩嵩継から先ほどまでの、どこ吹く風と人を食ったような色が消え、真摯な瞳が自分を射抜いた。


「しかし、私には柾の家を守る責務が有ります――柾の名を捨てることは……」
「知っているさ、柾の家は江戸時代から続く豪族としては名家に入る。だが、国家という家を守る為にどうか柾の名を捨ててほしい―――幸い、君には弟が二人いた筈だ。
 この申し出を受けてもらえるのなら、君の末弟とその恋人を徴兵免除にすることも出来るぞ。」

「中佐貴方は……!!」

 斑鳩嵩継の表情に紛れる、鋭利な刃物を連想させる氷の眼差し。
 其れに顔が強張る……この権謀と才を兼ね揃える男を敵に回して勝てる筈もない。
 また、この申し出を受けることに対してのデメリットは無い……寧ろメリットだらけだ。


「柾家の末君、分家からは要らない人間と冷たく扱われていたが君たち本家の人間は大層可愛がっていたそうだね―――何が一番かよく考えてくれないか。」


 自分よりも7つ年下の弟―――今でもはっきり覚えている、アイツを一つ下の弟と共に病院に赴きこの腕に抱いた感触を。
 篁唯依の泣き顔を見て憤りを抱いたのは、年の近い弟がこの不条理を受けねばならないかもしれないと身近な物に感じた事もある。

 だが、生まれた時から柾の家を継ぎ守ってゆくのだと、後継ぎなのだからと立派であらねば成らない―――そうやって生きて来た自分にとって柾の家は、存在意義そのものでもあったのだ。

 弟を守る為には、その存在意義を捨てねばならない。
 それは今までの人生を捨てることに他ならない―――だが、捨てたとしても家は一つ下の双子のように育った弟が立派に引き継ぐだろう。

 ―――自分の個人的感情を除けば、捨てることによるデメリットは一切無いのだ。


「――――少しだけ、考える時間を下さい。」
「ああ、分かっているよ。難しい問題だからね……しかし余り時間は上げらないよ。」
「承知しております。」


「では、私たちはこれで失礼させて貰うよ。篁中尉、一緒に来てくれるかな?嵩宰大尉には私から既に話を通しているよ。」
「あ、はい……では大尉お大事に。」


 斑鳩嵩継の言葉にやや後ろ髪を引かれながら頷く唯依。
 真壁助六郎の誘導により退室しようとする一同の最後に続く彼女だったが、部屋から出る直前に足を止め振り返った。


「遅れましたが、恭子様を……助けて頂きありがとうございます。ほんとうに……ほんとうに」


 深々と頭を下げる山吹を纏う少女――彼女が退室するとき、宙を舞
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