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駄目親父としっかり娘の珍道中
第65話 蚊だって生きている
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「やれやれ、貴様らは揃う度に見苦しい言い争いをするしか能がないんだな」

 そんな見苦しい光景を目の当たりにしたシグナムが鼻で笑って見せた。そんな態度に二人の怒りの矛先が一斉に向けられる。

「んだぁてめぇ、随分と余裕ぶっこいてんじゃねぇか。あれですか? 盗んだバイクで走りだしたい年頃なんですか? 年考えろや」
「貴様に言われたくないわ! とにかくだ、あれは確実に人間の類じゃない。恐らくは私達と同じ類。いわば魔法関係の輩に違いない」
「なんだと!」

 シグナムの推測を聞き、二人の顔が突如強張る。もし仮にそうだとしたら野放しには出来ない。
 あのまま奴を放置していたらどんな騒動にまで発展するか分かったもんじゃないからだ。

「だが、安心しろ。奴は私が始末する。この烈火の将シグナムの手で、奴の薄汚れた野望を根絶やしにしてくれるわ!」

 自信満々の表情のまま腰に挿していた刀を抜き放ち、月光の光に当てる。
 刀身が月の光に照らされて美しい輝きを見せる。
 そんな彼女に何処となく美しい、そう思ってしまう二人であった。
 
ガサガサ! ガササッ!

 突如、草陰から草のざわつく音がしだした。
 その音がした途端土方は再び池の中に沈み、その後に続くかの様に銀時とシグナムまでもが池の中へと身を沈めたのであった。
 三人の姿が完全に池の中へと消えた後、草陰の中から一匹の小さなカエルが姿を現す。
 音の正体がカエルだった事に安堵したのか、三人が揃って池から顔を出した。

「な、なんだカエルか……てっきり奴が来たかと思い咄嗟に身構えてしまったな」
「何が身構えるだよ。お前あんだけ見栄切って結局ビビってたんじゃねぇか」
「何を馬鹿な事を言う! 私の心は常に戦場の真っただ中に居るのと同じ心意気だ!」
「どうだかな、案外さっきのあれで股間の辺りとかぐっしょりになってんじゃねぇのか?」
「貴様……まさか私が……したとでも言いたいのか?」
「はぁ? 何言ったんだ? 良く聞こえなかったぞ」

 これみよがしにシグナムを挑発しだす銀時。彼が片耳に手を掛けて聞いてくるその仕草が心底むかついた。

「い、良いか! 私は断じて漏らしてなどいないからな!」
「ふぅん、それってつまり……図星って奴か?」
「ななな、何でそういう結論に行きつくんだ!」
「だってあれだろ? 案外そうやって図星な奴に限って墓穴掘るって相場が決まってるんだよ。これって常識だぜ、常識」
「貴様の常識など宛になるか!」
「あ、そうか! お前の場合は違うのか。股間からじゃなくてその無駄にでかい胸からぐっしょりと―――」

 其処から先の言葉はなかった。
 言い切るよりも先に彼女の固く握り締められた鉄拳が銀時の顔面にクリーンヒットしたからだ。

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