第65話 蚊だって生きている
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。新八はそう実感出来たのであった。
「そんじゃ気を取り直して今度は人生ゲームでもやろかぁ!」
”おーーー!”
「って何一つ聞いてねぇじゃねぇかぁぁぁぁ!」
新八の怒りのボルテージが更に上昇していく。
が、彼の怒りのボルテージが例え天を貫く勢いに達したとしても、目の前に居るこいつらが動き出すことはまずありえないのであった。
***
気が付けば、銀時は一人だだっ広い庭の真ん中に立っていた。
肩が震え、呼吸が乱れ、体中が汗ばんで不快極まりない状況だった。
手の甲で強引に顎付近に溜まっていた汗を拭い取り、銀時は自分が何故こうなったのかを必至に頭の中で整理していた。
唐突に目の前に現れた赤い着物の女。
不気味な女の霊のサムズアップに胆を潰された三人は一目散に女から逃げ出したのだ。
一心不乱だった為に脇目も振らず、ただひたすら逃げ続けた結果が今のこの現状だったりする。
「くそっ、まさか本当に女の幽霊が居たってのかよ。冗談じゃねぇぜ……畜生!」
悪態をつく銀時であったが、その言動からは普段の元気が感じられない。
体力の限界を超えて走り続けた為に既に彼の体力は底を尽きかけていたのだ。
更に、薄暗い夜中と言う不気味な状況に加えて先ほどの恐ろしいサムズアップも合わさり銀時のSAN値がガリガリ削り取られてしまっているのだ。
「参ったぜ、マヨラーカップルとも逸れちまったし、もしまたあの女の霊が現れたりしたらどうする? 俺一人でどうにか出来んのか? 俺ってこんな也してっけどごく普通の侍だしなぁ。陰陽道とか霊媒関係とか全然ダメだし……こんな事ならマジでその手の人連れてくるんだったかなぁ、例えばぬ〜べ〜とか……」
一人愚痴っていた銀時の耳元にまたしても鬱陶しい蚊の羽音が響いた。
こんな時にまで人の神経を逆なでしてくれる。銀時の頬に青筋が浮かび上がる。
「鬱陶しいんだよこの蚊がぁ!」
「何処でも何処でもブンブン出てきやがって!」
「少しは空気を読めこの害虫がぁ!」
銀時の怒号に合わせるかの如く、真横にあった池から土方が姿を現し、真後ろにあった木の葉っぱの中からシグナムが飛び出してきた。三人とも案外近くに隠れていたようだ。
互いに視線を合わせる。そして気まずい空気が流れだす。
「よ、よぉ……お前ら、こんな所で会うなんて奇遇だなぁ」
「お、おう……さっきは不意打ちを食らっちまって面喰っちまったが今度はそうはいかねぇ。次に出てきたら即刻袈裟がけに叩き斬ってやるぜ」
「無理すんなよ声が震えてるぜ。本当は怖くてちびりそうなんだろ?」
「誰がちびるか!」
顔を合わせるとすぐさま喧嘩を始めてしまう両者。正しく水と油の様な関係であった。
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