暁 〜小説投稿サイト〜
駄目親父としっかり娘の珍道中
第65話 蚊だって生きている
[13/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
はなかったな。やはり時代は我等騎士の時代。武士の時代など既に終わった時代よ。後で此処の局中法度も書き直しておかないとな。いや、それよりも下手人の捕縛が先―――」

 言葉の途中でシグナムの喉は詰まった。さっきまで倒れていた筈の男二人が赤い着物の女を持ち上げてこちらを睨んでいたのだ。
 二人の目は血走り、怒りに理性のたがが吹き飛んでいる事は明白の事であった。

「シ〜〜グナ〜〜ムさ〜〜ん? よぉくもやってくれましたねぇ〜〜?」
「てめぇ、上司を投げ飛ばすたぁ、良い度胸してんじゃねぇか? あぁ?」
「いや……それは……その……」

 どう言えば良いか言葉が見つからず、しどろもどろしだすシグナム。だが、すぐに軽く咳払いを一回した後、何事もなかったかの様な振る舞いをしつつ爽やかな顔をして二人を見た。

「いやぁ、赤い着物の女は強敵だったなぁ」

 まぶしく、そして爽やかな笑みを浮かべながらそう述べる烈火の将。
 が、それが通用する状態な筈もなく―――

「どの口が言ってんだこの野武士女がああぁぁぁ!」

 二人共見事に同じ言葉を同じタイミングで声高らかに叫び、そして持ち上げていた赤い着物の女を今度はシグナム目がけて猛然と投げつけてきたのだ。
 シグナムはそれを避ける事など出来ず、顔面から赤い着物の女の眉間を諸に食らい、今度はシグナムが赤い着物の女と共に地面に無様に倒れる結果となった。

「きゅぅぅ---」
「けっ、この俺を見下そうなんざ100年早ぇ!」
「武士道を見下すのもだ。もっぺん武士道のなんたるかってのを勉強しなおしてこいや!……ん?」

 冷静になった状態で銀時と土方は、改めてシグナムの横で気を失っている赤い着物の女を見入った。良く見ると、この女は幽霊と言うには良く見えるし、脚もある。それに、背中に羽が生えている。

「おい、幽霊の背中に羽……生えてたっけか?」
「生えてる訳ねぇだろうがったく!」

 無造作に頭を掻き毟りながら土方は苛立つ。

「どう見てもそいつは天人だよ! まさかこんな天人如きに家の隊は総崩れになったってのかよ。これじゃ笑い話にもなりゃしねぇぜ」
「ったく、幽霊にしても蚊にしてもはた迷惑なのは変わりねぇ話だぜ。ま、これで俺達がビビりじゃねぇってのが立証された訳だな」
「まぁな、後はこのはた迷惑な下手人を奴らの前へしょっ引けば今回の事件は無事解決って奴だ」

 思えば長い戦いであった。そう思えざるを得ない心情にあるのを心底銀時と土方は痛感していた。
 激闘に次ぐ激闘、死闘に次ぐ死闘。正に九死に一生を得るかの様な激しい戦いの一幕が、今ようやく幕を下ろしたのであった。
 ……え? そんな戦いなんてなかったって?
 心の汚れた読者には見えないのです。彼らの激しい死闘、そ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ