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駄目親父としっかり娘の珍道中
第65話 蚊だって生きている
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「るせぇ! 今日はあれだよ、腹の調子が悪いんだよ! あんな奴本来なら一撃粉砕なんだけどよぉ、今回だけは出番を譲ってやるってんだよ! 流石俺寛大だなぁ」
「そそそ、その通りだ! 上司たるもの部下の成長を見守る必要があるからな。日頃の鍛錬の成果を見る為にもあいつを倒せ! これは上司命令だからな!」
「ふざけるな! それただの言い訳だろうが! 私は絶対に嫌だからな! ってか押すな! 止めろ、止めろぉぉぉぉぉぉ!」

 大声を挙げて嫌がるシグナムを無理やり押し込み戦わせようとする情けない男二人。そんな三人に向かい赤い着物の女が猛スピードで突進してくる。
 恐らく次の一手で勝負を決めるつもりのようだ。そして、それはこちらにとっても同じ意味を成している。
 次の一手で勝負を決められなければ恐らく勝機はない。チャンスは一回きりだった。

「よし、良い感じで相手が突っ込んできてくれたぞ! さぁやれシグナム! お前の剣技を見せてやれ!」
「行け、シグナム! 日頃の鍛錬の成果を見せてやれ! 俺はその間援護してやるからな! (心の中で」
「貴様ら完全に他人任せにするつもりだろ! ってか土方! 貴様心の声駄々漏れだぞ! 絶対に援護する気ないだろうが!」

 こちらに突っ込んでくる赤い着物の女を前にしてシグナムが突如ジタバタと暴れ始めた。今更往生際が悪いぞとばかりに銀時と土方が押さえつける。
 その間にも赤い着物の女はグングンと迫ってきている。
 その距離は徐々に縮まり、20メートルになった。あ、今15メートルに、今度は10メートル。そして5メートルに……やがて互いの顔面があわや激突する距離にまで迫ってきていた。

「嫌だとぉぉぉぉ!」
「え?」「え?」

 シグナムは背中から自分を押している男二人の頭部を両手で鷲掴みにした。余りに突然起こった出来事に男二人は互いに目を合わせて現状を整理しようと必至に脳内計算を行い始めた。
 そんな無防備な状態の男二人を女の細腕が軽々と持ち上げたのだ。
 そして……

「言ってるだろうがぁぁぁぁぁ!」
「ぎぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ!」「んごわぁぁぁぁ!」

 怒号と共に迫り来る女目掛けて投げ飛ばしたのである。哀れ、男達は絶叫を挙げながら赤い服の女に激突し、そのまま女と共に放物線を描きながら地面へまっしぐらとなった。
 後に残っていたのは肩で息をするシグナムただ一人であった。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 暫くの間一言も話さず呼吸を整えようとしている。その為かシグナムの肩が上下に激しく揺れていた。
 数分の後に、無事に呼吸を整え終えたシグナムが軽く深呼吸を一回して、そのまま目の前で無様に倒れ伏している二人と赤い着物の女を見下ろしていた。

「ふん、貴様らの言う武士道とやらも大した事
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