消えゆく者・生き続ける想い
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れてないの、かよ。庇ってやったのに────ヒドイやつだなぁ」
ルーネスは、今にも閉ざしてしまいそうな霞んだ目で私を見ながら、微かな笑みを浮かべた。
………笑えない冗談だ。素直に云えばいいのか、自分を庇ってくれてありがとうと。
哀しめばいいのか、私を庇ったばかりにお前が死にゆくのを。
「自分のこと、責めんなよ。おれが勝手に、した事だから、さ───── 」
云い終えるなり、首から上、そして足先まで漆黒に染まり、遂にはルーネスという存在が、ただの黒い塊となって崩れ去り、残骸すらも、地面に染み入るように消えてしまった。
────私は、結局何も云えなかった。
云ってやれなかった。
勝手に逝くな、と。
私に借りを作ったまま居なくなるな、と。
………不意に、水の洞窟内が震動し始めた。
このまま自分も、この洞窟と共に埋もれてしまえばいい。
頭の片隅で、私はそう思っていた。
その後、復活した地上世界のアムルの街で我々は目覚めた。
水の巫女も、共に居た。
────彼女は云った。
あなた達と共に行かせて下さい、と。
ルーネスの代わりにはなれないが、それでも彼に代わって使命を果たしたい、と。
………断れる筈もなかった。
彼女の毅然とした姿勢に、我々は身が引き締まる思いだった。
そうだ、立ち止まってはいられない。
あいつの────ルーネスの分まで我々は、やらなければならない事がある。
生き抜かなければ。
あいつが存在していた記憶を、我々が紡いでゆく為に。
こちらが生きてさえいれば、居なくなってしまった存在も心の中に生き続ける。
いつかは自分も死ぬ。
だがそれは今じゃない。
心の中でお前を生かし続ける為、私達は今を──────
これからを生きよう。
End
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