消えゆく者・生き続ける想い
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光の戦士すら消し去る呪いの矢 ────
狙われたのは、私だった。
………だが、実際それに貫かれたのはルーネスだった。
私を、庇ったばかりに。
何故この時、すぐに気付けなかったのだろう、敵の気配に。
突如、私の身体はルーネスに強く押しやられていた。
次の瞬間目にしたのは、ルーネスの背中から突き出た陽炎のように揺らめく漆黒の矢先────
ゆっくりと横へ倒れ、遮られていた視界が開けた向こう側には、毒々しい色をしたフードを被った人間……?
いや、違う、それは見る間におぞましく肥大化し、自らをクラーケンと名乗る存在と化した。
考えている余裕はなかった。白魔法を扱える水の巫女にルーネスを任せ、私はアルクゥ、レフィアと共にありったけの怒りを込めてクラーケンに立ち向かう。
………死闘の果てにそいつを撃破する事は出来たが、横たわるルーネスを前に水の巫女は必死に白魔法で手を尽くしていた。
しかし────黒い陽炎のように揺らめく漆黒の矢はルーネスの胸に突き刺さったまま、黒い染みのようなものが広がってゆく。
血………、血ではない。全身が漆黒に塗り潰されつつあるかのようだ。
あのクラーケンは云っていた、"光の戦士すら消し去る呪いの矢"だと─────
ならばルーネスの存在は漆黒の闇に染まり、消滅してしまうのではないか。
私の脳裏に、最悪の事態がよぎる。
「おっかしい、な……。痛くないのに、ひどく寒くて、眠いんだ………」
意識が朦朧としているせいか、薄目を開けているのが精一杯らしい。
………私は膝を付いて、ルーネスの上半身を抱き支える。
「白魔法が、全く効かないのです……! ごめんなさい……、彼を救う事が出来ない……っ」
水の巫女の頬に、幾筋もの涙が伝う。
「そんな、じゃあルーネスは……!?」
「うそ────嘘よね……?!」
アルクゥとレフィアも、今にも泣き出しそうだ。
────私は不思議と、冷静になっていた。
怒りも哀しみも、今は感じない。
ただ、手元のルーネスの存在が漆黒に塗り潰されてゆくのを、見つめているに過ぎなかった。
「ごめん、みんな────おれ、光の戦士、失格みたいだ………」
ルーネスは、声を出すのもやっとの状態で言葉続ける。
「アルクゥ……、ニーナ母さんの事、頼むな……。レフィア……、おまえきっといい女、鍛冶師になれるぜ……。エリア────ごめん、こんなダメな光の戦士で……。けどおれ、君に逢えて、よかった」
そんな別れの言葉に、3人は返せる言葉もなく咽び泣いている。
「イングズ、は………何だ、泣いてく
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