妖精亭-フェアリーズハウス- part1/王女への謁見
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数日前、レコンキスタによるタルブ侵攻の直後のことだ。路地裏にてある事件が起こっていた。
「ち、こんな汚らしいところにまで追い込ませるとは…けがらわしい平民のくせに手間取らせおって…」
一人の脂肪で膨れ上がった腹をゆすりながら、一人のいかにも横柄な貴族の中年男が、自分の目の前に怖気ついて腰を抜かしている男を、ごみを見るような目で見降ろしていた。
「き、貴族様!私はあくまでまっとうな仕事をしていた身です!なぜこのような扱いを受けなくてはならないのですか!」
「何を言う?貴様ら平民は我ら貴族に生かしてもらっている、犬や猫と同じよ。にも拘らず私に生意気な口をきくなど万死に値するわ!」
おそらく、この横柄貴族に真正面から正論を言ったにも拘らず、この貴族は言うことを聞かず権力を盾に我儘を通し、逆恨みを晴らすために生意気な平民をこうして追ってきたのだろう。証拠にその貴族の背後に、彼の配下と思われる兵がずらりと並んでいる。が、何人かは弱い者いじめをやっているようで気が進まない様子だった。
すると、その平民の男を身を案じ、一人の年若い少女がその貴族の前に立った。
「貴族様!とんだご無礼をしてしまい申し訳ございません!ですからお願いです!私のお父さんをどうかお許しください!」
「何をしに来たんだ!下がりなさい!」
追われていた平民の男性の、娘のようだ。平民の男性は娘がこうして自分をかばいに来たことで、次に何をされるか容易に想像した。
「ほう…」
横柄貴族は少女の顎をつかみ、なめまわすような下卑た目で少女の容姿と肢体を見つめる。
「父思いで容姿も美しい…なかなか良い娘を持っているじゃないか。ようし、娘、お前が私に仕えるなら父を許してやろうではないか」
「あ、ありがとうございます…!」
自分はきっとこの男に言いようにされてしまうのだろう。でも、これも父親の命を助けるため。覚悟を決めた娘は立ち上がって貴族の後ろに回った。
「お、お待ちください!娘を…娘を返してください!」
しかし、それを父親が許せるはずもない。何をされるかさっきの貴族の行動でわかりきっている以上、誰が娘をあのような豚のような男に平気な顔で渡せるというのか。すがるように貴族の足にしがみつくと、横柄貴族は触られただけで顔を醜悪に歪ませ、平民の男を蹴り飛ばした。
「お父さん!!」
「貴様…平民の分際でこの私に汚い手で触りおって…新入り!この者に私に逆らうことの愚かしさを思い知らせてやれ!」
横柄貴族が命じると、兵たちの間から、一人の礼服を着込んだ人間が姿を現し、追われていた平民の前に立った。それは少年だった。なぜ少年?
が、次の瞬間その少年の月の光を逆行にしたシルエットが、人間のそれとは大きく異なる者に変貌した。少年の背中から、まるで何かの尾のようなものが伸びた。その尾のようなものの
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