第三話 夢じゃないんだよな?
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、ゴミが入った」
そう言って顔を隠したが俺にはわかるよ。
嬉しいよな。照れるよな。
俺もかなり恥ずかしいんだぜ?
「なあ、中西。全部終わったらまた草野球やろうぜ」
背を向ける中西にそう言うと彼は……。
「ばーか、この前も言ったろ。
俺はともかくお前の場合、世間が許さないって……」
中西は立ち去る前に目を真っ赤に充血させながら俺の方に振り向いてとびっきりの笑顔で笑いながらそう言ってきた。
宿舎の中庭に出ると1人黙々とバットを降る大柄な男がいた。
丸刈りの頭がトレードマークで図体に似合わずに頼りがいがあって試合になるとチームの司令塔をこなす捕手の赤石だ。
「誰の図体がデカイんだ?」
「あ、いや……森のクマさんの話を……」
「誰がクマだ!」
たまに鋭い奴だ。
「今日も早いな」
「ああ。昨日はあまり打てなかったからな」
いやいや、5打数3安打してたろ。
「甘い球を見逃すことがあるからな。
いつどんな球がきても打てるようにイメージトレーニングしとかないとな」
顔に似合わず、凄い奴だな。
「顔に似合わず……は余計だよ」
「読むなよ、人の心を」
「コウは顔にでやすいからな」
そうか?自分だとポーカーフェイスだと思っているんだけどな。
「体平気か?」
「大丈夫!大丈夫!」
「お前の大丈夫はアテにできねぇんだよ」
そう言って俺の肩やヒジを触ってきた赤石。
「寝違いで左腕を痛めても、打球が左手に当たって痛みがあっても無理してでも投げる奴だからな」
まだあの時の事を覚えているのか。
「もう無茶はしねぇよ」
「だといいんだけどな」
「怪我なんかしてられないだろ?」
「あん?」
「決勝まで……負けられないからな」
「……ああ」
『舞台は超満員の甲子園!』
超満員の舞台にふさわしいのは決勝だと思う。
若葉が、小学5年の夏に見た夢。
亡くなる朝に赤石や青葉に語った夢。
『コウがピッチャーで赤石君がキャッチャー。
舞台は超満員の甲子園____。
そうそう、中西君もいたわ。
バッタバッタの三振の山にアルプススタンドは大騒ぎ!
センターを守ってる青葉も大ハシャギ!』
なんて言っていたと青葉から聞いた。
女子の青葉が試合に、甲子園のグランドでプレイすることなんかできないんだけどな……。
『いいじゃない、夢なんだから』
若葉の声が聞こえた……ような気がしたがいいのか?
夢だからいいのか?
「コウ。決勝まで勝とうぜ!」
「ああ。超満員にしようぜ」
俺と赤石はそう誓いあった。
同じ女の子を好きになった者同士。
彼女の最期の夢
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