第三話 夢じゃないんだよな?
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。問題ねぇよ」
「昨日は大変だったなー」
中西が言ってるのは試合のことよりもその後のことだろう。
マスコミなどのメディアの相手と同じくらい大変だったのは女性のファンの方だった。
バスに乗るまでサインや記念撮影を求められたり、宿舎の前で待ち伏せされたり、中には数人宿舎の中に入ってきた強者までいた。
サインだけしてすぐに追い出したが相手するのは大変だった。
女性に追いかけまわされて嬉しくないわけじゃない。
ただその後が大変だから嫌なんだ。
何が嫌かって……。
何より大変なのは青葉だ。
何故かそれまで勝利したことによって機嫌よかった青葉の機嫌が最悪になり俺を無視するようになった。
お互いまだはっきりと告白したわけではないが以前と比べたら格段と距離は縮まっていた。
それが昨日の騒ぎでまた元に戻ってしまったかもしれない。
嫌われたかもしれない。俺が青葉だったら嫌になるかもしれない。
嫌われても仕方ない。
だけどどんなに嫌われても、なんとなくお互いの気持ちはわかってしまう。
一葉姉ちゃんいわく「似てんのよ、コウちゃんと青葉は……」らしい。
似てるからわかるのか。わかっているから似た行動をするのかはわからないけど……。
どっちにしろ嫌な感覚ではないな……。
そんな事を考えながら中西の話に適当に相づちをうっていると中西が東がいったように昨日の試合で投げた後からの腕の心配をしてきた。
「ヒジに痛みは?」
「ねぇよ」
「肩に張りは?」
「ない」
「頭は平気か?」
「どういう意味だ……」
「なぁ、コウ。俺達本当に勝ったんだよな?」
「ああ」
「夢じゃないんだよな?」
「ああ」
「甲子園で闘っているんだよな?」
「ああ」
「ありがとう、な」
「何が?」
「お前や東がいなかったらずっと夢のままだったよ」
「夢じゃねえよ」
そう夢じゃない。俺は、俺達は甲子園で闘っているんだ。
憧れの聖地で。夢の舞台で。
「お礼を言うなら俺の方だ」
俺は中西の方を見て、彼の目を見つめながらずっと言えなかった言葉を口にした。
「あの時、小学生の時、お前が野球に誘わなかったら俺はここにはいねぇよ。
あの時、クラスのチームで投手やらされなかったら……中学の時だってお前が俺を草野球に誘わなかったら俺は野球をやってなかったよ。
星秀に入って、プレハブ組に入って、大門野球を潰して、地区大会で竜旺に惜敗した時だって、今年甲子園に行けたのだってお前が俺の横で……ファーストやサードを守ってくれたからだ。お前がいたから今、俺は喜多村光はここにいる。
だからありがとう」
俺がそう言うと中西は泣きだした。
ポロポロ涙を流した。
「……目に
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