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提督の娘
第三章
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第三章

 それを意識しているのかしていないのか。彼の方に来てまた言ってきたのである。
「御願いします」
「わかりました。それでは」
「はい。では御願いしますね」
 こうして二人はその日ダンスを踊った。しかしその時はこれで終わりだった。だが三日後勤務が終わりダスティはまたその同期であるウィルマー=クラーク少尉と今度は基地の喫茶店にいた。そこで紅茶を飲みながら勤務の後の一時を過ごしていたのである。
 紅茶はミルクティーである。イギリス人だからこれだというわけではないが二人は今それを飲んでいる。それとケーキを食べながらダークブラウンの落ち着いた雰囲気のその店の中でそのミルクティーを飲みながら話をするのであった。
「この前のパーティーはいいものだったな」
「君にとってはそうだな」
 ウィルマーは笑って彼に返した。その丁寧に後ろに撫で付けたブラウンの髪と緑の目が印象的である。
「あれだけの美女と踊れたのだからな」
「そうだな。確かに奇麗だったな」
 それは彼も大いに認めるところだった。ティーカップを持ちながらそのうえで楽しげな微笑を同期に対して向けて言った言葉だ。
「あれだけの美女はな」
「いないな」
「イギリス人離れしていたな」 
 そしてこうも言うのだった。
「どうもな」
「アジア系だな。それも」
 ウィルマーはここでこの国の名前を出したのだった。
「日本だな」
「日本か」
「中国人の感じじゃないな」
 そうではないというのだった。
「もっと穏やかだ」
「それに色も白かったな」
「だから。日本の感じがするな」
 それだというのであった。
「あの人はな」
「日本か。遠洋航海で行ったな」
 ダスティは士官学校での教育の最後のそれを思い出しながら述べた。教育の最後に遠洋航海を行い総仕上げとするのは世界のどの海軍の士官教育の課程でも同じである。当然ながら日本でもそうであり海上自衛隊においてもそれは行われているのである。
「面白い国だったな」
「そうだったな。思っていた以上に賑やかだったな」
 二人は笑ってついこの前の様に思えるそのことを思い出していた。実際彼等は赴任したのはこの前であるがその直前まで遠洋航海に出ていたのである。
「あそこはな」
「そういえばそんな感じかな」
 ダスティはウィルマーの話を聞いて述べた。
「あの人はな」
「どうだい?惚れたかい?」
 今度はこんなことを言ってきたウィルマーだった。
「あの人に」
「少なくともまた会いたいものだね」
 ダスティの返答はこれであった。
「またね」
「それが君の考えか」
「そういうことだよ」
 まさにそうだというのだった。
「いや、本当にもう一度ね」
「では祈るとしよう」
 また言うウィルマーだった。
「あの美女に
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