第百八十四話 木津川口の海戦その十四
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「何と面妖な」
「あの兵達は何じゃ」
「闇の服に具足とな」
「全く以て」
「異様じゃ」
「どう見てもまともな者達ではないぞ」
こう言うのだった、そして。
その中でだ、彼等はというと。
お互いに顔を見合わせてだ、こう言った。
「これは最早な」
「幕府は終わりじゃ」
「あの様な異様な者達を雇うとは」
「そうした有様ではな」
「では、じゃな」
「我等は」
彼等の今度のことだった、話すことは。
「織田家から禄を貰っておるしな」
「着ておる服も青じゃ」
織田家の色だった、見ればそこにいる幕臣達はもう皆青い服に冠を身に着けている。織田家のその色をだ。
「それではな」
「幕府に義理立てすることもない」
「公方様もわし等を嫌っておられるし」
「それならな」
「このままな」
「織田家に向かおうぞ」
「信行様のところにな」
都を守る彼のところにというのだ。
「挙兵のこともお話しようぞ」
「最早我等は幕臣ではない」
「織田家の家臣じゃ」
「信長様が我等の家臣じゃ」
「それならな」
「もうな」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
幕府に残っていたわずかな幕臣達も遂に幕府を見限り織田家に入った、彼等はその足ですぐに六波羅にいる信行のところに向かった。
信行は六波羅で彼等の話を聞いてだ、すぐにこう答えた。
「わかった、ではな」
「はい、それでは」
「今すぐにですな」
「兵を動かす」
即座にだ、信行はこう言った。
「朝廷をお守りし民を戦から救うぞ」
「その幕府は」
「幕府はどうされますか」
「囲むだけでよい」
今は、というのだ。
「まずは朝廷と民じゃ」
「左様ですか」
「まずは」
「帝に何かあってはならぬ」
まずは帝だった。
「だからじゃ」
「ここは、ですか」
「まずは帝を」
「そういうことじゃ。そしてじゃ」
伸行はさらに言った。
「民をこの戦に巻き込むでない」
「では民達は」
「安全な場所にまで逃がしますか」
「まずはそうしたことに専念せよ」
これが信行の命だった、それを伝えてだった。
幕臣達に顔を向けてだ、穏やかな声でこう言った。
「礼を言う、よく伝えてくれた」
「いえ、それは」
「お構いなく」
「そう言ってくれるか」
「とにかくです」
「公方様は」
幕臣達は信行にさらに言う。
「挙兵されました」
「織田家に対して」
このことは間違いないというのだ。
「そしてです」
「織田家を敵と言われるかと」
「左様か、まさかとは思ったが」
それでもと言う信行だった、彼等の話を聞いて。
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