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美しき異形達
第二十七話 光の力その十

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「仕掛けるのならな」
「そうよ、普通はね」
「攻撃は動いて仕掛ける」
 怪人はこの『常識』を言った。
「そういうものだからな」
「そう、けれど今の闘いはね」
「先に動いた方が、だったからな」
「仕掛けてもね」
 そうしてもだった。
「どっちにしろ動いた方がどうなるかだったわ」
「だから俺も御前が動くと思っていたんだよ」
 そしてそこで出来た隙に仕掛けようと思っていたのだ。
「それか俺がわざと動いてな」
「あえて隙を作って」
「そこでカウンターを浴びせようと思っていたのだがな」
「私もそれを考えたけれどね」
「しかしか」
「そうよ、考えを変えたのよ」
 対峙するその中で、というのだ。
「ここはね」
「成程な、考えたものだな」
「私の作戦勝ちね」
「ああ、御前の勝ちだよ」
 腹を雷で貫かれ死が確実になっている、だからそれはもう認めるしかなかった。
「見事だった」
「褒めてくれるのね」
「少なくとも負け惜しみを言う趣味はないんだよ」
「だからそう言うのね」
「そうさ、動かないで闘うやり方か」
「剣道の極意では刀を持たずとも」
 剣道を剣道という名前にさせているそれを手にせずとも、というのだ。
「闘うやり方もあるというわ」
「そんなものもあるんだな」
「そうよ、面白いでしょう」
「そうだな、しかしもう俺はな」
 灰になろうとしているその中でだ。
「消えるからな」
「だからだというのね」
「ああ、それを確かめることは出来ないな」
 そのことが残念だというのだ。
「それは仕方ないな」
「そうなるわね」
「ああ、それじゃあな」
 それならとも言った怪人だった。
「お別れだな」
「そうね、これでね」
「去らせてもらうぜ」
 その死によって、というのだ。
「そろそろな」
「それではね」
 鈴蘭は怪人が灰になっていくのも見守った、そうしてだった。
 怪人は立ったまま灰になっていってだった、それから。
 消え去っていった、灰は他の怪人達と同じく風で消え去った。後に残ったものは何もなかった。それが闘いの終わりだった。
 その終わりまで見届けてからだった、鈴蘭は薊と黒蘭に顔を向けてきた。薊はその彼女に対して言った。
「あたしも驚いたよ」
「動かないで技を出したことについてね」
「ああ、あたしだってな」
 自分自身も、と言う薊だった。
「動くからさ」
「そうね、私もね」
「鈴蘭ちゃんも普段はか」
「ええ、動いてね」
 そうして、というのだ。
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