第一話 あの夏
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無情にも際どい球はボールとカウントされ、三島は四球で一塁へ走っていった。
三島は球に手を出さず、一歩も身体を動かさずに見逃した。
三島の出塁により二死一、二塁となった。
際どいコースを狙い過ぎたか……。
今、投げた球は間違いなく今日最速だった。
電光掲示板を見るが球速表示は表示されなかった。
三島を打ち取れなかったが、まだ試合は終わっていない。
次の打者をツーストライクに追い込むと最後の一球を投げる為に大きく振りかぶった。
球を放る直前、脳内に決勝戦当日の今日の朝、早朝のグランドで青葉に言った言葉が思い浮かんだ。
『嘘ついてもいいか?』
素直じゃない俺がそう言うと、普段は俺と似ていて素直じゃないのに青葉は『いいよ』と言ってくれた。
だから俺は遠慮なく嘘をつかせてもらうことにした。
『甲子園に行く!』
青葉直伝の力みのない流れるような理想的なフォームから剛速球がミットめがけて放たれた。
『160km/h出す!
そして___』
打者は空振りし放った球は赤石のミットに収まった。
やった。
俺は思わず両手を上に広げてバンザイをしてしまった。
『星秀学園甲子園初出場!』
実況はこの時そう告げていた。
青葉に言った最後の嘘……。
『月島青葉が一番好きだ!』
その言葉を思い出しながら俺は試合終了のサイレンを聞いていた。
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