第2話 震えと覚悟
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な、おい。覚悟を決めろよ、俺。
両手を強く握り締め、俺は震えを抑えると同時に覚悟を固める。
「さっさと逃げねぇと。癪だが、別の奴らの隠れ家に行くか」
どうやら移動するみたいだな。
俺はその場からジャンプすると、オッサンの前に飛び下りる。
……痛ぇ。
けど、俺の両足は無事だ。
俺も人のことは言えないかもしれん。
「だ、誰だてめぇは!って、ガキかよ。驚かせやがって」
オッサンはナイフを俺に向けながら、ビビリまくりの声で聞いてくる。
だが、俺が子どもだと分かると、すぐに笑みを浮かべる。
「こんにちは、おじさん」
俺は笑みを浮かべながらオッサンに近付いて行き、自分の攻撃範囲内に入ると同時に一気に地を蹴る。
同時に腰から『倚天』を抜き、オッサンの懐に入ると喉を斬る。
「がっ……」
男はロープを放し、血が流れ続ける喉を両手で抑え始めた。
「ヒュー、ヒュー……」
声帯が潰れたことで声が出せるはずも無く、ただ空気音が漏れ出るだけ。
『青紅倚天』を右手で抜くと、男の近付いていく。
「カヒュー、カヒュー……」
オッサンは首を振りながら俺を拒絶する。
その顔には、まだ子どもの俺への恐怖が見て取れる。
まあ、野盗なんかしてたら、いつかはこうなる運命だったよ。
俺に殺されるか、官軍に殺されるかの違いしかない。
あっ、母もいたな。
俺はオッサンの肩を掴んで固定すると、『青紅倚天』を心臓に突き刺した。
来世では幸せにな。
悪党でも、俺が奪った人間の命。
恨むなら恨んでくれ。
俺は心の中でそう呟くと、一気に『青紅倚天』を引き抜いた。
数秒手を合わせた後、女性たちへと顔を向ける。
「ひっ!!」
……怖がられた。マジでヘコむ。
「縁、良くやった!」
「母上」
母の声がしたので振り返ると、野盗退治を始まる前と何一つ変わっていない母が立っていた。
「おおっ。縁、返り血がすごいぞ」
「えっ?」
顔や服に触ってみると、血がべっとり付いている。
だから、怖がられたのか。
納得。
「ほら、これで拭け」
母は布を投げてくれた。
それを掴むと、とりあえず顔の血を拭く。
「母上。この方たちはどうします?」
「そうね。陽も沈んで来たところだし、今日は私たちの村に来てもらいましょう」
「わかった。じゃあ、早く帰ろう」
その後、まだ怯えている女性たちを母が宥め、村に帰ることになった。
とうとう、この日は俺への怯えが無くなることはなかった。
ヘコむ……。
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