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Element Magic Trinity
散る群青 願う彼女 立ち上がる少女
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よろめいたシャロンの体が数歩後ずさり、ナツは僅かに表情を緩ませた。まだ決着がついた訳ではないが、これでかなりのダメージを与える事は出来ただろう。
ふぅ、と息を吐きそろそろ一撃叩き込んでくるであろうティアを目の動きだけで探して―――――気づく。

(……いねえ?)

先ほど攻撃範囲から外れ前方を走っていたはずのあの姿が、どこを見てもない。右、左、飛んでいるのかと上を見ても、やはりいない。
おかしい、と思う。近距離だろうと遠距離だろうとどこからでもバンバン相手を狙っていくのがティアだからナツの視界の外にいてもおかしくはないのだが、このタイミングを逃すようなアイツではない。むしろ絶好のタイミングだと言わんばかりに、見ているこっちが思わず相手に同情しそうな勢いで攻撃を仕掛けまくっていくはずだ。だから、僅かでも時間が空く事は有り得ない。

(何で――――――)

違和感が頭の中を巡り、ナツは咄嗟に周囲を見回した。全方位を見回して、それでもその姿は目に映らない。いくらその速度を閃光に例えられるティアでも、残像すら残さず走る事なんて出来やしない事はよく知っている。本気を出して走ったとしても、その姿は十分視認出来るほどでしかないはずだ。

逃げた?そんな訳ない。ティアが何より嫌うのは、“何もしない事”と“逃げる事”だ。逃げるくらいなら勝てる可能性がなくても戦う方を選ぶわ、と吐き捨てるように呟いていたのを思い出す。

隠れた?それも有り得ない。そんな小細工を使うほど、ティアは策士ではない。相手の背後に回ったり視界から消える事はあっても、面倒な小細工は一切使わない。必要ないとさえ思っていると言っていた。


だとすれば。
逃げてもいない、隠れてもいないとなれば―――――アイツは、どこに行った?

「!」

空気を僅かに揺らす音に耳が反応して、反射的に振り返る。性能のいい滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の耳だからこそ聞こえた、本当に小さい音。
その音が何かを、ナツは視界に映る光景で理解した。



先ほどナツの拳を喰らったはずのシャロンが、後方にいる。
かなりの距離がある場所で、嘲るように口角を上げたシャロンの両手に溢れる、金色の光。竜を滅する為の魔法の光が、合わさる。


叫ぼうとして、ナツは咄嗟に口を開いた。それでも、今から何を叫ぼうと遅いのは、頭のどこかで理解していて。
それでも足掻いてやろうと、手を伸ばそうと、驚いたように目を見開くアイツの名を――――叫んだ。








「ティア――――――――――――!」












意味が解らなかった。
ついさっきまでかなり距離がある場所にいて、アイツの拳を真正面から受けて、よろけて後ずさっていたあの姿が、
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