暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
散る群青 願う彼女 立ち上がる少女
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か?」
「無理」
「はあ!?」
「なんて私が言う訳ないじゃない」
「だよな!」
「……その感じから察すると、アンタに手はないと」
「おう!」

ニッと笑って親指を立てるナツを今すぐ蹴り飛ばしたい衝動に駆られながらも、今はそんな事している場合じゃないと必死に自分に言い聞かせる。ギルドに帰ったら絶対蹴り飛ばしてやる、と思う事で苛立ちを抑えながら。
必死に精神統一したティアは目を向ける事なく続ける。

「ただし、私の方の手も確かじゃない。使った事は1度もないし、そもそも私が使えるのかさえ解らないんだから」
「……それってかなりヤバいんじゃ」
「仕方ないでしょ、使う機会なんてなかったし。それに……あれは、あの人のモノだから」
「?」

何かを思い詰めるような表情で呟いたティアに引っかかりを覚えつつ、それ以上はあえて聞かない。
なんとなく―――――本当になんとなくだが、彼女の言う“あの人”が誰かが解った気がしたから、聞くのは間違いだ。
いや、きっとナツが思い浮かべたあの人物で合っている。ティアがそれほどまでに大切そうに呟く相手は、今は1人しかいないのだから。

「とりあえず、今は集中。奥の手の事はその時に考えるから」
「解った!ぶん殴ればいいんだな!」
「誰もそんな事言ってないし…まあその通りだから否定はしないけど」

やれやれ、と首を横に振ったティアは―――――頬を掠めそうな一撃を、すぐさま感じ取った。
咄嗟に持ち前のスピードで右前方へと回避すると、冷たい無表情のシャロンと目が合う。

「いつまでお喋りしていれば気が済むのかしら」
「放置は寂しかったの?だったらそう言えばよかったんじゃない?」
「!このっ……!」

からかうようなティアの言葉に、シャロンの頬に朱が差した。向けられた右手から放たれる金色の光に表情を歪めつつ、攻撃範囲から外れようと力強く地を蹴り、駆ける。
その姿を追うようにシャロンの攻撃が続くが、そのスピードを閃光に例えられるティアの速度には追いつけない。ぐっと歯を噛みしめていると、前方から熱を感じた。

「オオオオオオオオッ!」
「チッ…星竜の鉄拳!」

炎を拳に纏いかけるナツの拳を受け止めようと、シャロンはティアへの攻撃の手を一旦休め、金色の光を纏う拳を打ちつける。
暫く力のぶつかり合いが続いたが、それだけで終わるナツではない。

「オラアッ!」
「ぐっ!」

空いている左拳にも炎を纏い、顔面を殴る。相手が女だとか初老だとか、そんな事はナツの前じゃ意味を成さない。敵なら殴る、それだけである。
力が緩んだ一瞬の隙を逃す訳もなく、続けざまに叩き込んだ拳にシャロンは表情を歪めた。

「紅蓮火竜拳!」
「ああああああああっ!」

炎を纏った拳が連続で決まる。

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