アリシゼーション編
第一章?七武侠会議編
狼煙
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しょう。木綿季、俺から絶対に離れるな。友紀奈様もお願いします」
「うん」
「……はい」
穏和な雰囲気を醸し出していた螢さんは、それをガラリと変え口調も元の堅いものに戻ってしまった。
(やっぱり、演技だったのかな……)
同じ境遇に居る立場とは言え、彼は皇が盟主を務める組織のいち構成員でしか無い。建前上、盟主と同列である各家当主ですら無いのだ。
対等な口調は皇である友紀奈が"お願い"した事だが、螢がそれを"命令"と捉えればこうなる事は必然だった。
「友紀奈?」
「……なんでもないよ。ありがとう、木綿季」
「え?……ど、どういたしまして?」
何故お礼を言われたのか分からない様子の木綿季に軽く微笑み、私達は螢さんに続いた。
(ケジメは必要だ。悪いな、友紀奈)
楽しいお遊びの時間は終わりだ。ここからは自分自身を、そして木綿季を生かして逃げ出す事が俺にとっての最優先事項となる。
残念ながら友紀奈まで守ってやれる自信は無い。そんな余裕は今は無いのだ。
街中で堂々と襲ってきた事から京都は既に山東が掌握していると見て間違い無い。日本を京都を中心として東西に分断し、各家からの援軍を阻止する算段だろう。
問題はやつらがこれから東西どちらに進軍するかだ。
皇の別宅に居た面子がやられたとは考えられない。どんなに数が居ようが水城悠人がいる限り、敗北は無いからだ。
ならば抗戦しつつ、撤退したと見るのが妥当。山東が進軍するのはそれとは逆方向だ。
情報も備えもが圧倒的に足りない。自衛すらままならない状況では友紀奈どころか自分も木綿季も危うい。
思考を高速で巡らせていた時に頭上から敵意が降ってくる。以前も感じたそれを今度は避けずに掴み取った。
ALO事件の最中、俺を襲った千本。最早懐かしさすら感じるそれを手に取って弄び、思わず声を弾ませながら言った。
「……ふむ、なるほどなるほど。そうゆう事だったのか。疑問に思っていた事が大方解決したよ。なぁ?山東の暗殺師さん?」
「そうよ。でも気付くのに時間が掛かり過ぎ。もう遅いわ、螢様」
音も無く目の前に降り立った暗殺師。古流暗殺術を使う、山東の尖兵。
「1年半前、ALO事件。発端となった約300人の未帰還者問題の際、警察の捜査に介入し、レクトプログレスフルダイブ技術研究部門の《感情操作》の研究についての隠蔽に手を貸し、発覚する直前に回収。半年前、GGO事件の際にも警察に介入。検査の際、サクシニルコリンの項目を外すように工作し、また『ボッシュ』こと糸井大輔の逃亡を幇助。そして約3ヶ月前、テロに乗じてこれら事件の重要参考人達を逃亡させた……目的は戦力の補充と《感情操作》の技術完成……。攻めて来たって事は完成したか?」
「さあそこまでは?私は下っ端ですし」
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