第一の晩 (1)
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「源次か。ありがとう」
「いえ。ようこそ、おいでくださいました」
タオルを受け取り、深々と頭を下げた男の名を呼ぶ。
こちらの様子を伺う留弗夫の視線が気になるが、俺はあえて源次に使いを頼んだ。
「今、この屋敷いる人間を呼んで来てくれ。俺の素性を知りたいらしくてな。一人一人に説明すんのは面倒だから、まとめて話す」
「俺からも頼むぜ源次さん。皆には、“19人目がいた”と伝えりゃいい」
源次は再び頭を下げ、短く返答する。その、一つ一つの動作には隙が無く綺麗だと関心させられた。
階段を駆け上がって行く源次の背中を見送り、再び留弗夫と2人きり。空気が張り詰める。
「............寒っ」
ピリピリした空気なんてどうでもいい。寒い! このままじゃ、本当に風邪を引く!
濡れた髪や体を拭い、雨をたっぷり吸い込んだ上着も脱ぐ。
右肩の“接続器具”が少し痛んだ。直に慣れるといいんだが...。
「お前、その腕は...」
留弗夫が、俺の腕を見て声を詰まらせる。
驚くのも無理はない。俺の右腕は偽物...義肢だ。
それにしても、初めて見る奴は同じ反応をするんだな。若い頃の金蔵を思い出す。あいつも、目を丸くしていたな。留弗夫と一緒で、人に指差して。
とはいえ、この腕を失った経緯を話すつもりはない。
『こことは違う世界』で失くしたと言ったところで、誰が信用するというんだ。
「昔、事故でな......」
伏し目がちに告げると、留弗夫もそれ以上は追及しようとはしなかった。
ふと視線を外した先に、小さな女の子がいた。確かあの子は...。
その子に話し掛けようと近寄る。留弗夫の静止を強要する声は無視した。親族たちが集まるまでの暇潰しだ。
女の子も俺に気付いたらしいが、その表情は強ばり、子供らしい無邪気さは感じられなかった。
俺の動作に一々反応して、体まで強ばらせる。そのビクビクする姿は、ドSの本能をくすぐられる。...だから子供は好きなんだ。
「こんにちは、真里亞。俺は《森の狼さん》...ベアトリーチェの友人だ」
「!? ......うー。マ、ママが知らない人とお話ししてはイケマセンって言った...」
んー...。
真里亞と会うのは初めてじゃないんだがなぁ。覚えてないか。
「なら大丈夫! 俺は《狼さん》だから、楼座には叱られる事はない。......だが、もし叱られそうになっても、俺が魔法で止めてやろう」
『魔法』と聞いて、ようやく真里亞の顔が上がった。その表情は、驚きつつも嬉しそうに目を輝かせている。
「狼さん、魔法が使えるの!?」
「も
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