第六話:英雄と殺人鬼
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…だ、そうだ。まあ尤も、俺も大人しく捕まってやるつもりはないぜ?」
三者三様の返答だが、共通する意思は拒絶。
当然の返答に溜息を一つ漏らして、レンは背後に開いた転移回廊へユメを放り込んだ。転移場所は自身のプレイヤーホーム。あそこなら圏内だから危害を加えることはできない。
「ならば良いだろう。お前ら全員、強制投獄だ」
右手に贖罪の剣を、左手に罪の剣を。断ち切るは己の因縁、堕ちた絶対守護者の名を再び世に知らしめる為、贖罪者は剣を執る。
「神の盾の名に懸けて、貴様らを断罪しよう」
† †
幾つもの剣が踊る。荒々しく、触れるもの全てを斬りつけながら、しかし美しく、流麗に。
それはまさしく剣の舞踏。操り手は一人の少年。
その手に握るのは罪と贖罪の名を冠する二刀。
そして背後に浮かぶは、数えるのが馬鹿らしくなるほど夥しい数の剣の切っ先。
操り手たる少年が号令を下せば、その切っ先達はこの世界唯一の弾丸となって標的を刺し貫くであろう。
このスキルの名は《ソード・ダンサー》。少年の持つ無限剣スキルの内の一端である。
このスキルに限って言えば、数的不利は一息に解消される。なにせ自身の保有している全ての剣が弾丸として射出できるのだ。際限なく、標的を屠りきるまで。
「踊れ」
主からの号令が下る。無数の剣軍は、その身を一つの銃弾とし主の敵を刺し貫いた。
「ぐっ…!」
よろける襤褸切れを巻きつけた髑髏仮面の暗殺者。その命の残量は危険域のレッドゾーンを指し示している。
今更彼に己の死への恐怖はないが、しかし人間の根源的感情ーーつまりは死への忌避感故に動きが鈍る。
「まずは、一人」
いつの間にか懐へ侵入していた無数の剣軍の主に体を押され、そして気づく。
背後に存在するのは回廊結晶、恐らく行き先は黒鉄宮の監獄エリアだろう。
今度こそ、この世界での赤眼のザザの凶行は完全に封じられた。
「てッ、んめぇぇぇぇぇ!!」
仲間が負けた怒りからか、はたまた抱いてしまった恐怖の感情を払拭するためか、頭陀袋を被った少年殺人鬼は怒声を上げた。
しかし激昂は時に力になることもあれど、その大分は注意力の散漫へ行き着く。
「後ろだ」
「っ!?」
少年のような華奢なアバターの左脇腹が剣弾によって抉り取られた。頭陀袋にくり抜かれた穴から見える眼が、驚愕に見開かれる。
「これで、二人目」
強烈な蹴りが少年殺人鬼を弾き飛ばした。その先にあるのはザザが通ったのと同じ回廊結晶。
「くそ、くそくそくそ! クソがぁぁぁぁあああああ!!」
怨嗟の声が、光に飲み込まれて消えた。今頃は黒鉄宮で待
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