第六話:英雄と殺人鬼
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
)
赤眼のザザの実力は、レンの見積もった以上のものだったのだ。負けることはないが、この戦いが長引くことは避けられないだろう。
しかしそれこそ不味い事態になる。ラフィン・コフィンの頭領たるPoHの実力は攻略組プレイヤーと遜色ない。ザザと二人でかかって来られたら、流石のレンでも苦戦は免れないことになる。
ならばと、レンは左の手を広げた。
「死、ねッ!」
かつてない隙を見せた敵に、ザザはエストックを握る右手を引き絞った。
システムによるアシストを受けて、ザザの右腕が霞むように動き出す。
スラスト系上位ソードスキル、現状でザザが最も信頼の置く技《スター・スプラッシュ》を発動しようとして、
「ーー断る」
しかしそれは、レンの左手に現れた漆黒の剣によって阻止された。
スター・スプラッシュの初撃である《突き》の際、レンは《無限剣》スキルで取り出したクリミナルエスパーダでザザのエストックの切っ先を弾き飛ばしたのだ。
「なッ…!?」
なんという絶技、なんという集中力。
レンは、ソードスキルが発動した後の切っ先を自らの剣技のみで打ち破ってみせたのだ。
「終わりだザザ」
ソードスキルを強制的に停止させられたザザには、数瞬のディレイが存在した。数にすればたった数秒、しかし、それは戦いに於いては致命的な停滞となる。
エスピアツィオーネに仄かな光が宿る。間違いなくソードスキル発動時のライトエフェクトだ。恐らくそれはザザが死なないように威力の低い初期ソードスキルだろう。しかし彼のステータスから放たれる単発攻撃で、ザザのHPの残りをほぼ削るのは容易だ。
敗北。それを覚悟した赤眼に、しかしその結末は訪れなかった。
「面白そうな事やってんじゃねえか」
背後から聞こえてきた張りのある艶やかな美声、その声に、レンとザザは違った感情を見せた。
ザザは安堵を、レンは焦りを。
直後、背後から激しい衝撃を受け、レンはその場を飛び退いた。
「よう、英雄サマ。連れの女は預かったぜ?」
「…PoH……!」
黒いポンチョで姿を隠した長身の男。紡がれる美声によるセリフは、いっそ気味の悪さを感じる程だ。その男の右脇には、意識を失っているのかぐったりとしたユメが抱えられていた。
「あっぶねぇ…助かったっす、ヘッド」
PoHに駆け寄る頭陀袋を被った少年のような殺人鬼は、ユメによってそのHPを半分以上削られていた。
背後を見ると、青い回廊があることから、転移回廊を使ってジョニー・ブラックを黒鉄宮へ強制移動しようとしたところをPoHに襲われたらしい。
「一気に窮地に立たされちまったな。さてどうする英雄サマ? 幾ら貴様でも、俺達三人を同時に相手するのは無理だろうよ」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ