第六話:英雄と殺人鬼
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「…ここが、奴らの潜んでいる所か」
ユメと臨時パーティを組んだ翌日、早速オレとユメはPoH達が潜んでいるらしい25層の『亡命の谷』というダンジョンを訪れていた。
なるほど、この高低差のある地形ならば身を潜めるのには最適だな。
「うん。情報によれば、ここの最奥にいるみたい」
「毎度思うんだが、お前の情報は一体どこから入手しているんだ?」
「アルっちと一緒に取材とかしてるからねー、色んな所にパイプができて半ば自動的に入ってくるんだよね」
ちなみに、『アルっち』とは情報屋で有名な鼠のアルゴのことだ。二人一組で行動している事が多いため、鼠のアルゴに対して《猫のユメ》と呼ばれているらしい。どこがどう猫なのかはまるで分からないが、一般に広まっているのだから今更どうという問題ではないだろう。
「そうか。今回ばかりはその情報は助かるな」
「む、今回ばかりってどういう意味? 普段は役に立ってないってこと?」
「ああ、いや、そういう訳ではないが」
頬を膨らませて不満を訴えるユメ。
とはいえ、彼女の情報には得するよりも困らされることが多いから良い思い出は少ない。口には出さないが。
「そういえば、この間の攻略戦は随分暴れたみたいだね」
「アイギスの汚名払拭の為だ。そのためならなんだってやるさ」
命を投げ出すことはできないが、命を掛けてでもそれはやり遂げなければならない。
オレがラフコフを完全に潰すことで、その第一歩となるはずだ。
「……無理はしないでね?」
「分かっている。死ぬつもりはさらさらないし、お前も死なせはしない」
もう少しで最奥の谷底に着く。警戒をしていこう。奴らは自分の欲求を満たすためならば汚い手も平気で使ってくるような人間だからな。
† †
このSAOというゲームが脱出不可能の檻になった時点で、その現実が受け止められず塞ぎ込む人間は少なくなかった。
それはそうだろう。つい先程までただのゲームと思っていたものが、気づけば自身の命が掛かった、ある意味では現実世界よりも生々しい世界に変わっていたのだから。
しかし人間には環境に適応する能力が根源的に備わっている。人々は次第にこの世界をもう一つの現実として受け止め、或いは無意識の内に許容し、そして第一層攻略作戦が行われた。
攻略組と呼ばれる人間は比較的にこの世界を受け止め、そしてこの世界に生きている。目的を持って『生活』している。
ならば、彼らもこの世界で正しく生きているのであろう。
レッドギルド『笑う棺桶』
仮想世界で生きているのならばこそ、ここでしかできない遊戯を。
殺しを容認し、推奨する危険極まりない犯罪者集団。
だが、見方を変えれば彼ら
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