暁 〜小説投稿サイト〜
あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
06
[1/12]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 小河内ダムに見下ろされた多摩川第一発電所。
 その内部、二基の巨大なフランシス式発電機を囲む様にして、人質たちが数珠繋ぎに拘束されている。
 三十八人いた人質は、一人減って三十七人になった。
 全員が顔に麻袋を被らせられて表情は窺えないが、俯き震え、恐怖が全身の汗腺から汗と共に噴き出している。
 彼らを取り囲むのは日本山林保護戦線が三人と、御堂が雇った密入国者が八人。
 そして御堂と、日本山林保護戦線のリーダーの相野という男。
 相野は唾を飛ばして御堂に詰め寄っていた。

「どうして勝手なことをした!? 人質は極力殺さないと言っていたじゃないか!」

 彼は御堂が人質を突き落としたことに、激昂していた。
 もともと日本山林保護戦線は、テロリストとは言っても穏健派。
 特に最近はダムや高速道路の建設を邪魔しに行くことはあっても、人を傷つけるような活動をすることは無かった。
 今回も人は出来る限り殺さないと、実行前に決めていたはずだ。
 にも関わらず、御堂は早速人質を殺害してしまった。

「だから一人しか殺さなかったじゃないか」

 御堂が不思議そうな顔をするのを見て、相野はこの計画に乗ったことを後悔した。
 そもそもこのダム占領計画も、御堂が彼らに持ちかけてきた話だ。
 長年弱小団体として日本国内で燻り続けていた自分たちに、御堂は目も眩む様な資金と、大量の武器と、共に戦う人間。そしてダム占領計画とそれを実行する行動力を持ってきた。
 爆破テロなど自分たちの手に余る。荒唐無稽だ。
 初めはそう感じていたはずだった。
 だが御堂と話をしているうちに、何故か自分たちには何だって出来るような気になり、そして崖から転がり落ちる様に現在の境遇にある。
 まさに、口車に乗せられた。
 御堂は蛇だ。巧みな言葉で、そして金で出来た果実で人の心を惑わせる。
 気付いた時には、もう取り返しのつかない状況に陥っているのだ。

「一人殺しただけでSATの動きを止められたんだ。割のいい抑止効果じゃないか。
そうだ、これを渡しておく。ダムに仕掛けた爆弾の起爆装置だ。ここぞという時に使え。
テレビのリモコンみたいに失くしたりするんじゃないぞ」

 御堂は安物の携帯電話を相野に手渡す。
 これに登録されている番号に通話すると、仕掛けられた高性能爆薬がダムを吹き飛ばすのだ。
 そんな危険な物を、本当にテレビのリモコンのような気軽さで持たされて、脂汗を全身から滴らせる相野と対照的に、御堂は気楽そうに笑う。

「御堂さん、応急処置終わりました」

 御堂の連れの青年が、全身血まみれになって駆け寄ってきた。
 彼は今まで負傷者の手当てをしていたのだ。
 御堂は頷き、相野を置いて処置の手際を確認しに行く。

「どこまで
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ