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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
06
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を揺らされ、モモの動きが鈍る。

「それとも、あの男――クラマだったか? 彼を撃ったことか?」

的も同然となったモモの鼻頭に、強烈なストレート。

「っぷぁ!」

「ところで」

 鼻血を吹いて仰け反るモモのフェイスマスクを掴み、

「私は君たちの事が知りたいんだ。クラマに、アザミ。そして君の名前は何だ?」

 剥いた。
 つるりと艶やかな黒髪の滝が零れる。
 赤く腫れ、鼻血を垂れ流した酷い顔でもなお、美しいと感じさせる端正な、そして十代にしか見えない未成熟な容貌が外気に晒された。

「……子供?!」

 さすがの御堂も、子供の顔が出てくるのは予想外だったらしい。
 面を食らって注意力が落ちた。
 御堂は背後からアザミのドロップキックを察知できずにモロに受けて、身体をくの字に曲げて前に吹っ飛んだ。

「モモ! 大丈夫!?」

「だいじょびだいじょび」

「全然大丈夫な呂律じゃないよ……立てる?」

 アザミの手を借りて、モモは膝に力を込めて立ち上がった。アザミもマスクを脱いで、顔の半面を血で黒く濡らしている。

「そうか、モモと言うのか」

 モモと連動するように、御堂もムクリと起き上がった。
 アザミの蹴りの直撃は、しかし大してダメージを与えていないようだ。

「君たち二人とも、もっとプロレスを見てドロップキックの練習をしたほうがいい」

 言って投げたのは、三個目の閃光手榴弾。
 光と音の爆発がモモとアザミの眼を奪い、御堂はエレベーターに向かって駆け出す。
 二人の眼が闇を取り戻した時には、御堂は既にエレベーターの中に入っていた。
 階数指定のボタンが押され、エレベーターの扉はゆっくり閉じる。

「…………化け物か」

 しかし閉じきる前に、アザミの跳躍力が十数メートル離れた扉に一蹴りでたどり着いていた。
 半開きの扉に体ごと突っ込んだアザミは、両開きの板を強引に開き、そしてその後ろからモモが御堂に飛び掛かる。
 義体の体当たりを受けて奥の壁に叩き付けられ、御堂の肺は押し潰される。
 腹にしがみ付き、両腕で締め付けてくるその力は、見た目どころか人の域を超えている。
 肋骨と背骨が軋みをあげ、内臓が圧力に激痛を生む。
モモを引き剥がそうと御堂がもがく間に、三人をまとめて腹内に収めたエレベーターは今度こそ扉を閉ざし、ダムの天端へと昇って行く。
 御堂は今日で一番の危機を感じていた。
 ゴリラ娘にベアハッグされ、バッタ娘は腰のホルスターから拳銃を抜こうとしている。万事休すだ。
 だから、少し本気を出す。
 御堂は動く左足でアザミを蹴り、エレベーターの壁に押し付けた。
 アザミが動きを制され銃を抜くのが遅れているうちに、モモの後頭部に両肘を振り下ろす
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