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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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「それでは失礼」

 手の平サイズの拳銃で作ったほんの一瞬の隙に、御堂は身を翻して脱兎の如く裏口へ走り抜けた。
 蔵馬の胸の一発が無線機を砕いてしまっていて、他の職員と連絡が取れない。
 このまま行かせては駄目だ。
 蔵馬の本能が最大級の警鐘を鳴らす。

「追え!」

「でもクラマさん、撃たれて!」

「25口径なんて効かん! いいから行け!」

 怒鳴り声に近い蔵馬の命令に、モモはそれ以上言わずに御堂を追った。
 モモよりも数秒早くに逃走を図った御堂は、既に裏口に辿り着いていた。
 ドアノブを捻りながら、作業着の裏に隠しておいた閃光手榴弾を二個取り出し安全ピンを抜く。
 ドアを潜ると同時に、一つを宙高くに放り投げた。
 約一秒後、強烈な発光が一帯の闇を白く塗りつぶす。外から発電所を見張っていたムラサキたちも、屋上で相野を拘束していた常盤とSAT隊員も、思わず目を覆った。
 瞳孔の開ききった夜の眼に、この光は痛みすら呼び起こす。
 外の人間の視界が奪われたこの数秒間。御堂は発電所の裏庭を通り抜け、二個目の閃光手榴弾を投げる。
こうしてムラサキたちの狙撃を躱し、ダムの排水溝上部にある通路に入った。この通路はダム内部に造られた、天端の展望塔に繋がるエレベーターに続いている。
 薄暗く冷えた空気に満ちた通路を中ほどまで走った。あと数十歩でエレベーターホールだ。

「――!」

 硬い足音が迫るのを、御堂の耳が捉えた。
 首を後ろに捻ると、硬いブーツの裏が見えた。
 モモのドロップキックだ。

「おっとっと」

 寸でのところで蹴りを躱され、モモは御堂の前に転がるように着地した。
蹴りを避けはしたが、御堂も体勢を崩して走りが停まる。

「派手なことするじゃないか」

「黙れ……!」

 モモは腰を低くして、エレベーターへ続く通路を塞ぐ。彼女を排除しなければ、御堂は前には進めない。
 ここで御堂を足止めしていれば、応援が駆けつけて作戦は終了だろう。
 だが。
 モモはマスクの下で犬歯を剥き出して怒りを露わにし、御堂に殴り掛かった。

「よくも!」

 大振りの拳は御堂のスウェーで簡単に躱される。

「よくも!」

 当たらなくても、拳を振り続ける。よくも、と歯を軋ませながら、殴り続ける。
 ――よくもクラマさんを撃ったな……!
 担当官を撃たれた怒りが、モモの行動を単純化させる。

「何を怒っているんだ?」

 単調な空振りの殴打に合わせるように、御堂のコンパクトなストレートがモモの顔面を穿った。

「人質を殺したことか?」

 挑発的に言葉を重ねながら、モモの顔を滅多打ちにする。

「アザミと言う背の低い、君の仲間を撃ったことか?」

 脳
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