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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
06
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タービンフロアに辿り着いた。
 タービンを囲んで縛られた人質の一団は、見た感じでは無事なようだ。

「クラマさん、人質がいます」

 ドイツの軽機関銃MG4を掲げたアザミが、人質に寄って行こうとするのを制する。

「アザミ。人質の解放はSATに任せて、残りのテロリストがいないか警戒しろ」

 タービンフロアは天井が高く、水車と水が通る太いパイプ以外はすっきりとした造りになっている。
 身を隠せそうな所は無さそうだ。
 モモがフロアの最奥、外へ出られる裏口を見つける。

「裏口がありますね。ここから逃げたんでしょうか」

「だとしても、この先はダムの壁と天端に続くエレベーターだけだ。
 上はさっき初瀬たちが制圧したらしいから、そっちに逃げてたとしても袋の鼠だな」

 言いながらクリアリングを完了させ、蔵馬を構えていたM4カービンを下げた。
 どうやら常盤が追って行ったテロリストが最後だったようだ。
 発電所の外での戦闘で、既に二人のテロリストを捕縛している。後は警察に現場を明け渡して、作戦完了だ。
 一応人質の人数確認だけしておく。

「人質は何人だ? 全員いるか?」

 義体二人に尋ね、彼女らは二手に分かれて人質を数える。

「一、二、三………………三十五、三十六、三十七人です」

「三十七、三十七…………っ!?」

 人質は事件発生時で三十七人。一人殺されて三十六人のはずだ。
 一人多い。

「気付かれたか」

 男の呟き。
 声が耳に届き、蔵馬の眼がその主を探そうと巡る。

「ぐっ!」

 しかし見つけるより先に、銃声と、胸と腹に重い衝撃が来た。
 撃たれた。そう直感し、ともかく射線から身を逸らすために地へ転がる。
 二発目の弾丸が蔵馬の傍を通り抜け、マズルフラッシュが暗いフロアの中で燃えた。
 近い。十メートルと離れていない。
 やはり人質の円の中。コルト・ジュニアを握っている者がいた。御堂だ。
周りの人間と同じ青い作業着を着て麻袋を被っているが、目の部分に穴があけられている。
 人質の中に紛れて、隙を突くつもりだったのだろう。
 蔵馬は、まんまとしてやられた。

「クラマさん!」

 三発目から蔵馬を守ろうと、モモは猫のような俊敏さで二人の間に入った。
 そしてタボールを構える。
モモの指がトリガーに掛かるより先に、駆け寄ってきた御堂に銃身を蹴られた。タボールはモモの手を離れてクルクル宙を舞い、配管の裏に落下した。
 蔵馬とモモを見下ろす御堂は、拳銃を二人には向けずにMG4で狙いをつけていたアザミに発砲した。
 連続射撃の一発がアザミの頬を裂き耳を射抜く。
 25口径の小さな傷だが、それでもアザミの射撃を一瞬遅らせるには十分だった。


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