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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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が小河内ダムに響いた。
展望塔の窓ガラスは、爆発に面した物全てが砕け散った。
爆音が外にいたセンターの職員とSAT隊員の視線を集める。
一連の様子を眺めていた御堂は、輝き散るガラス片の中で拍手と一笑をモモに送る。
「やるじゃないか」
そして、空いた窓からSATに向かって、御堂も手榴弾を投げてよこした。
精鋭らしく、彼らはすぐに手榴弾に気付き、殺傷範囲内から退避する。
だがその行動は、天端に警戒の空白を作った。
二度目の爆発に紛れて御堂は展望塔から外に出る。
その隙間を通って、御堂は天端を悠々と横切り、多摩湖に飛び込んだ。
水飛沫があがり、黒い水面が波打つ。
そしてそのまま、御堂は姿を消したのだった。
二台の黒のハイエースが山道を走る。
奥多摩の奥地へ沈むその車の他に、この道を走る物は無かった。
先頭のハイエースには捕縛したテロリストが乗せられ、次走の車内には傷を負った蔵馬とモモが、治療を終えてシートに身を預けていた。
作戦を終えてから、二人は一言も話していない。
ただ蔵馬は虚空の一点を睨み続け、モモは目を閉じ彼の隣にいる。
拳一個分。それが二人の間にある距離だ。
「……負けました」
ようやく出たモモの言葉は、敗北の宣言だった。
言って、モモの目尻に涙が玉を作る。
「負けました」
もう一度言い、貯まった涙が雫となって落ちた。
「私……義体なのに……素手の人間に……」
涙は止まらず、モモのすすり泣く声が車内を満たす。
義体なのに。戦うための兵器なのに。担当官を守る盾なのに。
戦いに負け、命令を守れず、担当官は負傷した。
今、モモは間違いなく、使えない兵器だった。
使えない道具はどうなるのだろう。
使用目的を果たせない道具は、一体何なのだろう。
――私は一体、何なのだろう。
「弱くて……ごめんなさい……ごめんなさい……クラマさん……ごめんなさい……」
この夜、少女の泣声が止むことは無かった。
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