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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
06
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「ぐぅ……!」

 今の打撃で腕の力が緩んだ。アザミを押さえていた足を戻して強引にモモとの間に入れ、前蹴りの要領で蹴り放した。
 銃を抜き終えていたアザミにモモをぶつけ、銃を向けさせない。
前蹴りで上がった左脚を踏み込みに使って半歩詰め、再度向けてこようとするアザミの拳銃を左手で払う。
 そして右手ですくい上げる様に掌底をモモの顎に入れ、左手にあるアザミの腕を掴んで引き寄せ、腰を入れた右肘打ち。
側頭部にめり込んだエルボーがアザミの鼓膜を破いて耳から血が噴いた。
 この肘打ちで御堂の全身に左回転がかかった。
 その勢いを殺さず、右足を軸にして身体を左に回す。
 右掌底と右肘打ち。右からの攻撃を受けていたモモとアザミはエレベーターの左側に寄っていた。
 空いた右側のスペースに御堂は身体を滑り込ませる。
 そして身体を一回転させて遠心力が乗った右フックを、モモの左頬に叩き込んだ。
 拳と壁に顔面が殴挟される。モモの咥内から血に混じって歯が数本吐き出た。
 二人が仲良くエレベーターの左面の壁に衝突し、そして狭い戦場となっていた箱はダムの天辺に到着した。
 上昇が停まり、扉がゆっくり開く。
 モモとアザミは血まみれになってエレベーターの床に崩れて、動く気配はない。
 御堂は優雅に歩いて、エレベーターからダム提頂の展望塔に降りた。

「では、また会おう。モモ、アザミ」

 エレベーター内の二人に笑顔で手を掲げ、懐からRGD-5手榴弾を二個取り出した。これが最後の武器だ。
 展望塔の外には、SATと黒い戦闘服を着た連中の姿が見える。まだ御堂がここに上がってきたことには気付いていないらしい。
 初めの閃光手榴弾に気を取られ、多くはダムの下を見下ろしている。
 蔵馬の無線機が壊れたのは偶然だが、これが御堂の逃走を容易にしていた。運まで彼の味方であるようだ。
 両手に持った安全ピンを抜き、外のSAT隊員たちに向けて投擲の姿勢を取る。

「ま……で…………!」

 御堂の足首に、軽い衝撃。
 ズタボロになったモモがしがみ付いていた。姿は弱弱しいが、膂力は健在。このままでは御堂の足首の骨が握り折られる。

「……。四秒だ。急げ」

 手榴弾を片方、アザミがいるエレベーター内に放った。
 レバーが外れ、信管が作動する。
 一秒。

「ぐ――ッ!」

 モモは御堂の脚から手榴弾に首を巡らし、手を放す。
 二秒。
 脳震盪が脚を上手く動かさせない。両腕で床を掻いて手榴弾を追う。
 三秒。
 人間離れの義体の筋肉は、辛うじて腕での跳躍を可能にした。モモの手が手榴弾に届く。
 四秒。
 エレベーターの外へ投げる。手榴弾は展望塔の窓を破って屋外に出た。
 爆発が爆風と熱と破片を飛ばし、爆発音
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