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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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楽しみねームラサキ。いっぱいお肉食べれるわよ」

「……うち鹿肉きらい」

「ははは、どんなに嫌いでも、食べ物がそれしかなければ嫌でも好きになるわ」

 半ベソになるムラサキを引きずり、じゃねーと手を振り石室は運動場から去って行った。
 ガサツな女だが、あれでも京都大学出身らしい。人の内側は外面では推し量れないものだ。

「まさに、あの声で蜥蜴食らうかホトトギス」

「……クラマさん……クラマさん……本当に破れます……」

 独りごちる蔵馬の尻の下では、全ベソのモモがすすり泣いていた。





 小河内ダム。
 東京都奥多摩に造られた人工湖である、奥多摩湖を堰き止める巨堤だ。
 高さ一四九メートル、幅三五三メートルのダムは山のように大きく、総貯水量は一八九,一〇〇,〇〇〇キロリットル。国内でもそれなりの規模を持っている。
 このダムが、テロリストによって占拠された。
 犯行グループは日本山林保護戦線を名乗るエコテロリストだ。
 昭和のダム建設ラッシュ時に活動していた弱小環境テログループだが、ラッシュの収束と共に存在意義を無くし、とうの昔自然消滅したと思われていた組織である。
 故に公安のマークからも完全に外れており、日本政府は不意を突かれた形となった。
 犯行グループの要求は、警視庁にのみビデオメッセージという形で送られてきた。

『日本にある全貯水ダムの即時解体及び、全山林開発事業の凍結。
これが呑まれなかった場合、小河内ダムに仕掛けた爆弾を起動させ、ダムを決壊させる。
 なおこの事件がマスコミに漏れた場合も、ダムを爆破する』

という要求に加えて、ダムの内部通路と外壁、放水ゲートに仕掛けられた大量の高性能爆薬。
 人質として拘束されたダムと発電所の職員たち。
 そしてアサルトライフルを携えて、スノーマスクで顔を隠したテロリストたちの映像が添えられていた。
 この事件はすぐに警視庁公安部に回され、秘密裏に対策本部が設立される。
 そして事件の秘匿性と事態の緊急性から、すぐにSATの突入が決定されたのだった。





 奥多摩の山中。
 国道411号線を、青色の大型警察車両・特型警護車2型が三台連なって走行していた。
 警視庁特殊急襲部隊SATを運ぶ輸送車だ。
 彼らはこれから小河内ダムへ向かい、ダムを占拠したテロリストを殲滅する。
 SATは犯人逮捕を目的に作られた部隊では無い。
 危険分子の速やかな排除。それがSATの行動方針だ。
 そのために彼らは毎日常人には耐えがたい訓練を乗り越えてきた。
 今日のような状況を想定された訓練も何百何千と繰り返してきた。
 いつものように。
 訓練通りに。
 SAT隊員たちは輸送車の中で、各々が何度も何度も脳内で
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