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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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を並んで同時に出来そうなほど広さを持つ、その一角。

「あんたら何やってんの?」

「何って、柔軟だ」

 センターの職員である石室夕子は、大股開きで前屈しているモモの背に腰掛けて煙草を吹かしている蔵馬を発見した。美少女を椅子にして吸う煙草はさぞ美味かろう。
 蔵馬は迷彩シャツにOD色カーゴパンツという、色気という色気を一切排除した服飾で身を包む石室を見上げ、

「格闘技教えてやろうとしたんだが、見ろ。こいつ身体硬すぎる」

「うぎぎ……」

 苦しげに呻くモモの身体は、柔軟というにはあまりに傾く角度が浅い。

「確かにそうだけど、開脚で無茶しすぎると処女膜破れるよ」

「毎日柔軟しろと言ったのに、サボりやがった罰だ。ていうかモモ、お前なんて処女膜あるのか」

「うぎぎぎ……有りますよぉ、クラマさんの為に大事に取っておいた……うぎぎぎぎぎ! 痛い! クラマさん痛い! 破けちゃううう!」

「義体もサボったりするのねえ」

 じゃれ合う二人を見て、夕子はぽつりと呟く。

「他の子達は?」

「アザミとタンポポはキリングハウスでCQB訓練やってる。他は知らん」

 モモの背中にほとんど全体重を預けながら、蔵馬は運動場と隣接した近接戦闘訓練場の方を指差した。
 時折指した方向から銃声に混じって「ゴラアアアアア!」だの「ボケエエエエエ!」だの大よそ人の物とは思えない吠え声が聞こえてくる。

「初瀬か……元気ねえ」

「あのバカと訓練で被るとは。常盤……運のない奴」

「そういや常盤が先週捕まえた扇動屋いたでしょ」

「ああ、俺らが救急隊員に化けて回収しに行った奴か。あいつがどうかしたか」

「いや、別にどうもしてないんだけどね。結局雇い主の情報、全然出てこなかったみたいだわ」

「常盤が先に持って帰った携帯も空だったし、これで手詰まりだな」

「実は常盤君が携帯の中身を先に消したりしてたりして」

「敵が送り込んだスパイでしたって展開か。今度尋問してやろう」

 ケラケラ笑い合う二人。
 すると、石室の迷彩シャツが後ろから引っ張られた。

「……夕子」

「ん、ああ」

 石室の陰に隠れていた、義体のムラサキだ。彼女の担当義体である。

「今日石室は非番じゃ無いのか?」

「そうだよ。狩猟期間になったし、これから鹿狩り。鹿がセンター内の赤外
線センサーに引っかかって鬱陶しいから、数減らしてこいって部長がさ」

 石室は背中のガンケースを背負い直した。ムラサキの背にも、夕子とお揃いの物がある。

「ついでにムラサキに、動く目標を狙撃する経験値を積ませるわ。この前アザミちゃんが湾岸でテロリストの手を打ち抜いたのに、この子対抗意識燃やしちゃって。
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