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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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奥多摩。国立児童社会復帰センター。
山に囲まれたこの場所は、元は昭和末期の箱物建設ラッシュに建てられた野外活動施設だった。子供たちが楽しく自然と触れ合えるようにと作られた、どの都道府県にも二つ三つはあるアレである。
箱物行政の終焉と共に政府から切り捨てられて、長年売りに出されていたここを、再び政府が拾い上げて義体の研究施設として改築したのだ。
故にセンターの内装や備品は、野外活動施設だった頃の物がそのまま使われていたりする。
義体たちが寝泊まりする寮などは、特に流用品が多い。
秋葉原での仕事を終えて、モモが寮に帰ってきた時にはもう夜の九時を回っていた。
義体寮の二階。
蛍光灯に白く照らされた寒々しい廊下。
同じ形の扉が並ぶ、その中の一室。二〇二号室が彼女の部屋だ。
少し質素すぎるだろうか。
昼間ケバケバしいほど色とりどりな色彩を見たせいか、普段気にしたこともなかった寮の装飾に、つい意識が向いてしまう。アニメのポスターを貼ろうというわけではないが、もう少し、何か彩りが欲しい。ついでだから何だかんだで今まで一度も触れなかった部屋の内装も、少しいじってみようか。生後6ヶ月とは言え乙女の部屋に、ベッドと机と大型ロッカーだけというはかえって不健全である。まるで教育期間中の自衛官の部屋ではないか。明日クラマさんに相談してみよう。
「ただいまー」
「おかえりー」
自室に帰ったモモに返すのは、ルームメイトのアザミだ。二段パイプベッドの上段でうつ伏せになりながら、上身だけ起こす。
ふわふわのくせ毛をショートカットにした、やる気のなさそうな垂れ目の少女である。見た目の年齢は一三歳程度。高校生ほどの容姿に作られたモモと並べば、友人というよりは姉妹に見える。
モモのひとつ前に作られた義体で、仕事でも組むことが多い。昨夜の東京湾での仕事で、モモたちを狙撃で援護したのも彼女である。
「アザミ、昨日の狙撃凄かったね! 銃を持った手に一発!」
「凄いっしょー、私も正直当たるとは思わなくてさー」
怖いことを言ってくれる。
モモは空笑いしながらカーデガンを洗濯籠に入れた。中には昨日の負傷で血の付いた服以外の衣装と下着が詰め込まれている。明日は非番なので、まとめて洗ってしまう算段だ。ベッド脇のロッカーから洗面用具とタオルと寝間着を出し、
「アザミ、お風呂行こう」
ベッドの上でうだうだしているアザミに声をかける。
寮の浴室の使用時間は十時までだ。早くしないと風呂に入り損ねる。
「……ん? 私は、入りました、よ?」
ベッドから動こうともせず、アザミはすでに入浴は済ませたと嘯く。
モモは入浴グッズを机に置くと、不動の姿勢のアザミに鼻を近づけた。
「……硝煙臭い。どうせ昨
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