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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
03
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ど。今日の目当てはその扇動家なんですね。テロリストとの繋がりがあるから。……あ!」

 アザミが外を指差す。デモ隊の一人が、手に持っていたペットボトルを機動隊に向かって投げつけたのだ。
 引き金は引かれた。
 それからはもう、デモ隊が手に持っていたもの機動隊に投げつけ、封鎖された道路へと流れ込もうとする。機動隊もそれに応じて動きだし、人の奔流は渦を巻いて騒乱となる。

「あーあ、始まった」

「最初にペットボトルを投げた人が扇動家ですか?」

「違うよ。扇動家は煽るだけだ」

 一瞬、常盤の目の雰囲気が変わる。森の全てを見渡す梟のような、動物的な目だ。

「…………いた、彼だ」

 人が入り乱れてごった返すスクランブル交差点を一望する常盤の目が、あ
る一人の男を捕えた。紺色のシャツにジーンズの、どこにでもいそうな痩せた中年だ。男は暴動から逃げ出すデモ参加者に混じって、道玄坂通りに入って行った。

「彼だ。アザミちゃん! 追うよ!」

「はい!」

 常盤はアザミの肩を叩いて、店外へ駆けて行った。アザミもそれを追う。
 二つのカップだけが、店に残されていた。





 騒然とする道玄坂通り。
 騒ぎから逃れそうとする者と、騒ぎを見物しようと近づいていく者。そうして出来た人の渦を、常盤はするすると器用に進む。一方アザミは人波に弄ばれ、思うように身動きが取れていない。

「トキワさん!」

「アザミちゃん! こっち!」

 常盤はアザミが伸ばした手を掴むと、一気寄せて、そのまま引いて行く。
 背の低いアザミには周りがどうなっているのか把握出来ていないが、身長一八五センチの常盤は周囲から頭一つ飛び出しており、かろうじて目指す先が見えている。
 前方、30メートル先に、扇動家の男がいる。彼も常盤と同じように、慣れた身のこなしで人混みを避けていた。

「トキワさん、どうしてあの人だと分かったんですか?」

「まあ色々だね。例えば今だって、彼はこの混雑の中を滞り無く進んでいる
よね。あれはこういった混乱の中を歩きなれている証拠だ。扇動家は一度場の空気が燃えたらすぐに姿を消さないといけないから、自然とああなるんだよ」

「もしかして、さっきの一瞬で探し出したんですか、トキワさん」

「そんな訳無いじゃない。彼はデモ行進中から目を付けてたうちの一人だよ」

 道玄坂を半ばまで進み、扇動家は左の細い路地に入った。追って二人も路地に入り、ようやくすし詰めから解放される。人のいない路地の奥。この先は、

「入り組んだ路地だ。アザミちゃん、行って!」

 命じられ、アザミは弾けるように走り出した。デニムのホットパンツから伸びる細脚が高速で回転する。
辛気臭い細路地の突き当り
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