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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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日からお風呂入ってないんでしょ。ほら、行くよ」
「……いーやーだー!」
ミノムシのようにベッドに張り付くアザミを寝床から引き剥がし、彼女の不整頓なロッカーから適当なタオルと下着とTシャツを引っ張り出す。なお抵抗を続ける往生際の悪いアザミを器用に抱えて、モモは一階の浴室へ向かった。
アザミは顔を水に濡らすことを極端に嫌がる。
これは義体になる前に受けた心的外傷に寄るものであるらしい。条件付けを施せばこの症状も無くなるらしいのだが、日本政府は義体をなるべく長期的に使うつもりであるらしく、脳に多大な負担を掛ける条件付けは必要最小限しか行われない。
担当官の意向もあるが、それこそ昨夜モモがしたような、作戦遂行に影響を及ぼすようなことが無ければ原則条件付けはされないのだ。
それが、日本の義体運用である。
作戦遂行には影響なしと判断されたアザミの水嫌いだが、放っておけば彼女はいつまで経っても風呂に入らない。
いくらサイボーグとは言え身体の半分は人間のままである。汗だって掻く。訓練や仕事で汚れだってする。
要するに臭くなる。
アザミが野良猫のような臭いを放ち出す前に、風呂へ連れ込み洗浄するのが、センターでのモモの役割なのである。当初は大格闘の末に大根でも洗うかのような様相を見せていた二人のお風呂戦争も、今ではモモに軍配が揚がっているようだ。
慣れた手つきで嫌がるアザミの服をひん剥き、浴槽へ蹴り入れ、隙あらば逃げ出そうとするのをがっちりホールドして温まった後に、まるで気が触れたかのように大暴れする彼女の髪をさっさと洗ってからその痩躯もゴシゴシタオルで擦り、ボディソープをシャワーで流してから、やっと解放する。
部屋に戻ってグロッキー状態になったアザミのふわふわの髪を乾かしてやり、ようやくモモの仕事は終わるのだ。
これでも初めよりはだいぶ水にも慣れた方で、昔は頭を洗っている最中によくゲロゲロ吐いた。
「はい、終わり」
ドライヤーを切ってアザミの肩を叩くと、青虫みたいにベッドの梯子をもぞもぞ登って、再びうつ伏せの姿勢に戻った。
続いて自分の長い黒髪を丁寧に乾かしながら、モモは独りでに語り出す。
「今日は秋葉原に行ったんだ」
「…………へえ」
「凄い街でね、あちこちポスターとかいっぱい貼ってて、すごい派手だった
よ」
「…………へえ」
「そういえば、クラマさんたちがいつもいる事務室のコピー機とシュレッダーとコーヒーメーカーに名前があるんだよ」
「…………へえ」
「あとね、日本ってすごい平和なんだって。変だよね、私たちはいつも戦ってるのに」
「…………へえ」
モモは話し続ける。
独り言のようなでもあるモモの言葉に、アザミは返事をし続けた。
これが彼女
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